三浦雄一郎さん(撮影/写真部・馬場岳人)
三浦雄一郎さん(撮影/写真部・馬場岳人)
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まさにこの足で一歩一歩前へ進み、世界最高峰を3度登頂した。普段から1.7キロの“ダンベルシューズ”を履き、さらに重りをつけている(撮影/写真部・馬場岳人)
まさにこの足で一歩一歩前へ進み、世界最高峰を3度登頂した。普段から1.7キロの“ダンベルシューズ”を履き、さらに重りをつけている(撮影/写真部・馬場岳人)

 今年の5月、80歳にして3度目のエベレスト登頂に成功。“大きな夢”が身体を作り上げてきた。

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 三浦雄一郎さんは1932年、青森県生まれ。66年に富士山の直滑降を成功させて、一躍有名になった。53歳で世界七大陸最高峰からのスキー滑降を達成し、70歳、75歳でエベレスト登頂に成功。そして今回は80歳という世界最高齢での登頂を成し遂げた。

 病気やケガも度々経験している。60代は肥満や狭心症、糖尿病に悩まされ、76歳では骨盤骨折により再起が危ぶまれた。不整脈で何度も心臓を手術している。

 しかし、それらを乗り越え、今も驚異的な身体を維持している。

「健康法には“攻め”と“守り”があります。僕は無理をしない、控えるという姿勢ではなく、いくつになっても攻めるべきだと思うんです。忙しいからジムに通ったことはないのですが、いつも両足に約5キロの重りをつけ、20キロの荷物を背負って歩いています。部屋には3キロ、10キロの鉄アレイがあって、朝起きたら、ぶらぶら持ち上げたりするんです。筋力を鍛えると骨密度が上がり、成長ホルモンが出るんですよ」

 三浦さんはそう話す。年をとったら「脂分は控えめに」などと言われるが、三浦さんは食生活でも“攻め”の姿勢だ。

「月1回は息子の豪太と二人で1.5キロのステーキを食べます。普段は300グラムほどの肉を週に1、2回。納豆やヨーグルトなどの発酵食品も毎朝食べます。

 そして、何よりも大切なのはメンタルだという。

「たとえば、同じ年齢の人が同じ条件で手術しても、『生きるぞ』という意欲がある人はすぐ治るし、『もうだめだ』と思っている人は本当にだめになってしまうそうです。単純に言えば、プラス思考が大事。マイナス思考の人はできない理由を並べるけれど、僕は『どうやったらできるか』しか考えない。どうしてもエベレストに登りたかったから、ケガも病気も乗り越える以外なかったんです」

 次の目標は、85歳でヒマラヤ山脈のチョーオユー(8201メートル)からスキー滑降すること。

「面白いからやってみたいんです。それに、健康長寿社会がこれから日本の課題になる。医学博士の豪太とともに、どうやったら元気に長生きできるかを解明したい」

 人間の可能性は果てしない。三浦さんはそれを体現している。

週刊朝日 2013年9月6日号