がんによる死亡者数は年間36万人。3人に1人ががんで亡くなり、新たにがんにかかる人も増え続けている。男女ともにかかる人の数が多いのは、胃がん、肺がん、大腸がん、肝がんで、女性はトップの乳がんが加わる。

 がんの治療は目覚ましく進歩し、新たな治療の選択肢が次々と加わっているが、昔も今も、これらのがんの最も有力な治療法が「手術」であることに変わりはない。

 手術は体からがんを取り去ることで根治が期待できる。その半面、体に傷をつけるぶん回復には時間がかかり、その後の生活に支障をきたす可能性もある。近年は切除する範囲を絞り込むなどして、機能を残す努力をしているほか、小さな切開創からカメラや器具を入れて操作する「鏡視下手術(胸腔鏡下手術や腹腔鏡下手術)」など、ダメージを少なくした手術も普及した。さらに鏡視下手術の発展形として、立体画像を見ながら、ロボットアームを遠隔操作する「ロボット手術」も登場し、70を超える医療機関で稼働している。

 また、ごく早期の胃がんや大腸がんであれば、「内視鏡治療」も可能だ。急速に高齢化が進む中で、「体にやさしい手術」の役割はますます大きくなっていくことだろう。

 がんは、手術、放射線治療、化学治療の3大療法による標準治療が確立されている。一方、臨床試験中の新しい治療も選択肢のひとつになり得る。自分のがんにはどの治療法がベストかを選択する際は、標準治療を基本に、新しい治療のメリット、デメリットを知って判断することが大切だ。

 がんを治すことも共生していくことも可能になった今、知識と情報を蓄えて賢い選択をしていきたい。

週刊朝日 2013年9月6日号