アルツハイマー型認知症が広く知られる一方、レビー小体型認知症は医師への啓発がまだ不十分で、正しく診断されずにいる潜在患者が多いという。1976年以降の一連の研究で、世界で初めてこの病気を明らかにした、メディカルケアコート・クリニック院長の小阪憲司医師に聞いた。

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 レビー小体型認知症では、「α(アルファ)シヌクレイン」というたんぱく質を主成分とするレビー小体が、おもに脳の大脳皮質に広く出現します。一方、パーキンソン病でもレビー小体が見られ、この場合はおもに脳幹という部分に現れます。そのため、どちらも本質的には同類の病気、連続性をもつ病気と考えられ、近年では両者を合わせ「レビー小体病」というようになりました。

 高齢者を診察する医師に「レビー小体病」という認識があれば、レビー小体型認知症の的確な診断と治療に結びつきやすいのですが、まだまだ認識の浅い医師が少なくないのが現状です。また、この病気が疑われる患者さんは、精神症状が強い場合は精神科に、パーキンソン症状が目立つときは神経内科にかかることが多いため、見落とされてしまうこともあります。患者や家族の話をよく聞いてくれる医師にまず相談するのがいちばん大事です。

 レビー小体型認知症の治療では、コリンエステラーゼ阻害薬が効果を示します。認知機能障害や精神症状を改善し、病気の進行を遅らせるという点で、アルツハイマー型認知症の治療薬として健康保険が認められているものの、レビー小体型認知症の治療には保険適用されていません。それでもレビー小体型認知症に詳しい医師はすでに処方に踏み切っています。ドネぺジル(アリセプト)については、近い将来、保険適用されると予想され、そうなれば病気の認知度も大幅に上がり、早期に適切な治療を受けやすくなります。

 治療とともに重要なのは、この病気への接し方です。たとえば、幻視に対し「そんなものは見えないよ」と家族が頭ごなしに否定したら、本人はひどく傷つきます。そこで家族との間に精神的な溝が生まれると、治療や介護に悪影響が出てきてしまいます。幻視を訴える本人をいったん受け入れる姿勢が大切です。

週刊朝日 2013年6月14日号