冬本番の2月。寒い日が続くが、この時期とくに気をつけたいのが脳卒中だ。

 著名人でも冬の脳卒中の例は多い。テレビ東京のアナウンサー、大橋未歩さん(34)の他に、元巨人監督の長嶋茂雄氏(76)、タレントの麻木久仁子さん(50)、先日亡くなった元横綱・大鵬(享年72)も、寒い時期に脳卒中を発症している。

 東京都済生会中央病院院長で、神経内科医の高木誠医師は、「脳出血は冬に多い」と実感を込めて話す。その原因を、こう説明する。

「冬になり寒くなると、もともと血圧が高い人はもちろん、血圧が正常な人でも若干、高くなり、脳卒中を引き起こしやすくなります。これは、体を寒さから守るため、ストレス反応の一つとして交感神経系の働きが強くなり、アドレナリンなどのホルモン分泌が増えるからです」

 冬はこうした血圧の上昇に加えて、室内と屋外、あるいは部屋と廊下など家の中の温度差などによって、血圧が大きく変動する。この血圧の上昇や下降が脳の血管に負担をかけ、脳出血の引き金となると考えられている。ほかにも、冬には血液の粘度(粘っこさ)が上がり、血流が悪くなるという報告もある。高木医師は、このような冬の「隠れ脱水」が脳梗塞の危険因子になりかねないと指摘する。

 では、冬の脳卒中を予防するにはどうしたらいいのだろうか。
 
 夜間にトイレに行きたくない、あるいは冬はそれほど水分をとらなくてもいいと、水分を控える人がいる。しかし、そうすると隠れ脱水が進み、脳梗塞の危険が高まる可能性がある。運動時や入浴時も含め、夏と同じくらい脱水に気を付け、適度な水分補給をすることが大切だ。

週刊朝日 2013年2月15日号