「実現したい計画を全うするには18年間(3期)は十分な期間」。この言葉を残し、西川きよしが名に恥じぬ潔さで政界を去ったのは、2004年のことだ。横山やすしとのコンビ、「やすし・きよし」で1980年代の漫才ブームの立役者となり、86年に参院議員となって以降は福祉の充実に注力してきたきよし師匠。理想にしていたのはやはり、あの人の引退劇だった――。
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いやあ、僕にとっての「引き際の美しさナンバーワン」は、家内のヘレンなんですわ。お互い19歳で出会って付き合い始めたころ、すでにへレンは吉本新喜劇の主役で、全国ネットのテレビ番組にも出演してたんです。まさに将来を嘱望された女優ですよね。一方の僕は、通行人役がせいぜい。会社に結婚したいと申し出ると、
「職場結婚は許さん。どうしても一緒になりたい言うんやったら、看板のヘレンが残って、駆け出しのお前がやめろ」
と言い渡されてしまいました。するとヘレンは、
「私は家で待つほうがいい。私が引退して、あんたに賭けます」
と言って、いっさいの仕事をスパッとやめてしもたんです。
彼女はアメリカ軍人の父と日本人の母の間に生まれたハーフで、母ひとり子ひとりで育ちましたから、明るくにぎやかな大家族に憧れていたんですね。それにしても、僕が逆の立場だったら、自分が引退するなんてできなかったんじゃないかなって思いますよ。家内が僕の人生に賭けてくれたから、やすしさんという相方とも出会えて、2人で漫才を頑張ってこられたんです。
※週刊朝日 2012年11月23日号