料理研究家の行正り香氏は、101歳の現役医師、日野原重明氏の「人が求めることに応え続ける根気と思いやり」を見て、その気持ちは同じ職場の人すべてに伝わっていくことを感じたという。そして、自身の「仕事」に対する思いをこう明かす。

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 仕事は定年になったら終わり、というのは、ある意味、平均寿命が70代くらいの時代の考え方ではないかな、と最近思います。平均で女性が85歳、男性が79歳くらいまで生きるのだとしたら、50代で仕事のピークを迎えたとしても、その後に働ける年月が20年以上あります。

 仕事というのは、会社に勤めることだけではありません。家にいれば、掃除機をかける、買い物をする、トマトを育てる、犬の散歩をするなど、日常の中にたくさんの仕事が存在します。職場という場所で仕事ができなかったとしても、仕事を見つけることはできるのです。大事なことは、やっている仕事に「誇り」を持つことです。家がキレイになっただけで、私などは達成感があります。人が私の料理をおいしいと言ってくれたら、うれしいな、と思います。そういう小さな達成感の積み重ねが、落ち込んでしまいそうなとき、自分を前向きにしてくれるのではないでしょうか。

 やっていることがビジネスでなくてもいい。ビジネスの中心にいられるのは、きっとラッキーな人でも10年くらい。だとしたら、自分の中に仕事を見つけ、年を重ねても前を向いて生きていけるようになりたいな、と思う今日この頃です。

 今週のレシピ「みょうがとソーセージの焼きそば」は本誌で紹介しています。

週刊朝日 2012年10月26日号