東京・六本木のクラブ「フラワー」で9月2日未明、飲食店経営の藤本亮介さん(31)が目出し帽をかぶった男9人の集団に金属バットや鉄パイプでめった打ちにされ、殺害された。――事件から1カ月、情報は錯綜し、捜査は“持久戦”の様相を呈している。

「出国者を含めて数人の実名が挙がっているが、実行犯との確証はない。タレこみを含め、すべての情報を疑ってみている」と漏らすのは、ある捜査幹部だ。脳裏にあるのは、2008年に東京・西新宿の路上で発生した未解決の殺人事件。今回と同様、目出し帽をかぶった10人ほどの男らに、男性が金属バットで撲殺された。男性は暴力団関係者とのトラブルがうわさされていた。

「あの事件でも、被害者の知人から『関東連合』だの暴力団関係者だの、怪しい名前が何人も出て、片っ端から取り調べた。だが、やつらはグルでうそをつく。実行犯の名前を供述したものの、その男にたどりついたら完全なアリバイがあったり、供述内容を後から『勘違いだった』とシラを切ったり。逮捕歴のある人間が多く、捜査を惑わす手口を周知させているのだろう」(前出の捜査幹部)

 それでも、“外堀”は着々と埋められている。警視庁は事件後の9月7日、関東連合元リーダーの石元太一容疑者を別の詐欺事件で逮捕。30日には、店名を変えて無許可で営業再開した「フラワー」の経営者ら8人を逮捕した。

 こうした捜査の結果、当局には「藤本さんは人違いで襲撃された」という見方が浮上しているという。まさに、本誌・週刊朝日が9月21日号で「被害者は人違い、犯人は海外逃亡」と指摘したとおりの展開になりつつある。

 さらに今回、本誌は取材を進める中で、事件関係者と近い人物からこんな“重大証言”を得た。

「事件の首謀者は関東連合OBで、元暴力団員の“M”という話だ。が、すでに海外に出国しており、行方はわからない」

週刊朝日 2012年10月19日号