米ボストンコンサルティンググループ(BCG)が今年2月に米国の製造業106社を対象に行った調査によると、「中国から製造拠点の移転を計画、もしくは検討している」と回答した企業は37%に上った。売上高が100億ドル以上の大企業では、48%と半数近くに達している。

 実際、工場建設などに伴う各国からの中国への直接投資額は、欧州危機で投資活動が冷え込んだことも影響し、今年1~8月は前年同期と比べて3%減った。

 ただ、日本だけは、同16%増と2ケタ増。長引く円高で国内より安い人件費が必要なため、唯一、中国経済に貢献していたのだ。だが、今回の中国の暴挙は、こうした動きに完全にブレーキをかけるという。

 大和総研の谷亮丸(みつまる)氏は、こう指摘する。「そもそも、人件費が中国より安い国は、いまやたくさんある。『世界の工場』としての中国の役割は終わった。中国以外に生産拠点を移す動きが加速するのは間違いない」。

 前述したBCGの調査でも、人件費の高騰を「脱中国」の理由に挙げる企業が多かった。

「ユニクロ」のファーストリテイリングも、脱中国を決断した企業の一つだ。2010年、衣料生産の一部をバングラデシュに移転。化学大手の信越化学もレアアースを分離・精製する新工場をベトナムに建設、来年2月に稼働する。

 13億人の消費市場としての魅力と、チャイナリスクをどう判断するか――日本企業の判断が揺れるなか、"脱出先"として有望視されるのがASEAN(東南アジア諸国連合)地域だ。中でも、ベトナムの人気が高い。人件費は中国の3分の1程度だ。

※週刊朝日 2012年10月5日号