8月10日に李明博(イミョンバク)大統領が突如上陸し、騒ぎがおさまらない竹島問題。歴史的に日本の領土であることに疑いの余地はないにもかかわらず、韓国が自分たちの領土と主張する理由をニュースキャスターの辛坊治郎氏は、「韓国国民の『恨(ハン)』のシンボルだから」と分析する。

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 それにしてもなぜ明白な日本領土について、圧倒的多数の韓国人が「無垢」に自国領土だと主張するのか? その心理を知ることは、問題解決にとって無駄ではないだろう。

 そもそも領土問題は、民族意識をかきたてる最大の要素であるが、竹島は韓国の人々の心に単なる領土問題以上の「ざわめき」をもたらす。

 カギは1905年という年にある。韓国が日本の植民地になったのは1910年だが、一夜にしてそうなったわけではない。明治維新後、急速に近代化を進めた日本は、旧態依然の王朝政治の中で停滞していた韓国に少しずつ触手を伸ばしていく。最初の大きな「成果」は1904年の第1次日韓協約だ。これによって、韓国は財政と外交について、日本政府が送り込む顧問の関与を余儀なくされる。さらに翌年、協約は改定され、外交権が実質的に日本に移された。日本が竹島を島根県に編入したのは、この二つの協約の狭間(はざま)の出来事だった。韓国の人々の脳裏に浮かぶ竹島・島根県編入の歴史は、朝鮮半島の日本併合と相似であり、民族の屈辱の歴史の第一幕なのだ。

 韓国の中学歴史教科書は、わずか0.21平方キロメートルしかないこの岩について、5ページを割いている。韓国の歴代政権は竹島を愛国心涵養(かんよう)の手段として利用し、今やこの島は、韓国国民にとって日本の植民地支配に対する「恨」のシンボルとなっているのだ。

※週刊朝日 2012年9月14日号