もともとワインには特に興味がなかったという、ソムリエの田崎真也さん。プロのサービススタッフとして一流になる夢を目指し、フランスで勉強をしていくうちにワインと出会い、その魅力に惹きつけられた。田崎さんがフランスで過ごした日々を振り返る。

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 当時、フランスで修行している料理人はいたけれど、サービススタッフはほとんどいなかった。だから、フランスに行ったら箔(はく)がつくだろうな、と漠然と思っていました。ただ、渡航費が高かったので、いつかはと思う程度でした。

 アルバイトを掛け持ちして渡航費用をためる一方で、フランスの情報を集めたりしました。そんな中で、フランスに行って何をすべきかが見えてきたんです。

 それまで、フランス料理やサービスについて勉強し、実践も積んでいました。でも、サービスの重要な部分を占めるワインについては何もわからなかった。当時の日本には、ワインの情報がほとんどなかったからです。だから、フランスに行って真っ先にやるべきことは、ワインの勉強だろうと思ったわけです。

 フランスではワインを知るためにボルドーやブルゴーニュなどで醸造所巡りもしましたが、学校に通うとか、有名店で修業するなどは、特に考えませんでした。フランス料理を育んだ文化の中に身を置いて、食を始め、さまざまな経験を積むことに意味があったんです。ただ、滞在が長くなって、何か目に見える成果がないと日本に帰れないぞという気持ちになってきたんですね。それで、ワインの専門学校に通い、本格的なソムリエ養成コースを卒業しました。日本人では初めてでした。

※週刊朝日 2012年8月31日号