「民主党のブレーン」と呼ばれた榊原英資・青山学院大学教授は当初、政権交代に大きな期待を寄せた。しかし、新著『なぜ日本の政治はここまで堕落したのか』(朝日新聞出版)では、野田政権に対する強い失望感を隠さない。「素人集団」が官僚に「丸投げ」している―――と、厳しく批判する。
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 正直に言って、野田佳彦内閣は「素人集団」です。主要閣僚に軒並み素人を登用してしまいました。
 たとえば安住淳財務相は、経済や財政についてはよく知らないはずです。衆院安全保障委員長や、防衛副大臣を歴任するなど、どちらかと言えば安全保障の領域で活動してきました。本人も野田内閣が発足した直後の記者会見で、「わたしの得意分野というのは、自虐的に言えば国会対策と安全保障だった」と語ったほどです。
 玄葉光一郎外相も、民主党で分権調査会長や地域主権・規制改革研究会会長を務めた経験があるなど、もともと地方行政の専門家です。外交に詳しいとは思えません。さらに田中直紀防衛相は、あの体たらく。
 要職がみんな素人では、内閣として機能するわけがありません。政治主導を旗印に掲げても、主導する能力がない人が閣僚になっている。どうしたって、事務次官に「丸投げ」するしかありません。こういう面で、わたしは野田政権に非常に批判的です。

※週刊朝日

 2012年4月27日号