しかし、これらのことをしたとしても、被曝しないかといえば、そうではない。


「大気中に放射性物質が蔓延しているので、ドアを開閉しても室内に入ってくるし、スーパーなどの商品に放射性物質が付着している場合もある。物理的に考えて、完全に被曝を防ぐことはできない。気休めにしかなりません」(同)
 福島第一原発の爆発で避難した人のうち、40歳未満全員が甲状腺がんを防ぐ「ヨウ化カリウム」を服用した。事前に放射性のないヨウ素剤を服用することで、放射性ヨウ素を吸い込んでも甲状腺が飽和されているため、甲状腺がんの予防になるという。「ヨウ化カリウム丸」(日医工)などがあるが、購入するには、原則、医師の処方箋が必要となる。
 しかし、上澤氏はこう言う。
「甲状腺が活発な若い人は飲んだほうがいいが、放射能は何十種類もあるので、ヨウ素剤では、ヨウ素以外の放射能は防げません」
 さらに注意しないといけないのは、身近に放射能が飛散しなくても、被曝した地域の農産物や畜産物などを口にしたら、そこから体内被曝をすることもあるし、水源地が被曝していれば水道から被曝してしまうことにもなる。
 放射能が飛散すればするほど、被曝を防ぐことは難しいのだという。確実なのは、爆発してから身近に放射性物質が到達するまでに避難することだ。
「例えば、東京なら、単純に、福島─東京間約200キロを風速で計算して、時間を測ります」(上澤氏)
 もし、南西方面に風速4メートルであれば、わずか約14時間で到達する。
「とはいえ、仮に逃げのびたとしても、汚染の程度によっては、いつ東京に戻れるかわかりません」(同)
 人間に牙をむいた放射能は、まさに「死の灰」なのだ。

週刊朝日