◆これからのこと予想もつかない◆


──1号機はウラン燃料、3号機は昨年9月からMOX燃料を使っています。

 MOX燃料はウランの酸化物とプルトニウムの酸化物を混合したものです。プルトニウムの生物毒性はウランの20万倍とも言われています。実際に爆発した場合の毒性は単純に20万倍というわけではありませんが、ウランだけの燃料に比べ毒性が高まるのは間違いありません。
 さらに、プルトニウムは本来、高速増殖炉で使用すべきものであり、福島第一原発にある沸騰水型炉で使用すべき燃料ではない。家庭用の石油ストーブにガソリンを混ぜた灯油を入れているようなものです。平常時であっても、軽水炉でMOX燃料を使用するということ自体が、非常に危険なことなのです。
 それでも、日本の原発がMOX燃料を使用しているのは、日本が世界有数のプルトニウム保有国だからです。第2次世界大戦中に長崎に投下された原爆はプルトニウム爆弾ですが、現在、日本はプルトニウム原爆を4千個も作れるほど保有しているのです。そのため、世界から早急にプルトニウムを消費することを求められている。だが、国内にある高速増殖炉「もんじゅ」は、1995年に起きたナトリウム漏れ事故などで操業停止になっています。そこで、国から泣きつかれた東京電力など電力各社は、軽水炉でMOX燃料を使うことにしたわけです。

──1号機と3号機はとりあえず、危機を脱したと見てよいのでしょうか。

 わかりません。冷却水の水位が下がったことで、炉心が露出してしまい、炉心溶融が起きたのは間違いありませんし、これからどうなるのかも予想がつかない。私は、これまで、再三にわたって警告してきましたが、地震や津波などの非常事態に備えてあったはずの非常用電源も電源車も、何の役にも立たないことがハッキリしました。
 これは、チェルノブイリや米国スリーマイル島の事故に匹敵するようなシビア・アクシデントなのです。

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