◆本州は関東まで居住が不可能に◆


 さらに、放射線の強さが半減するまでの時間を意味する「半減期」が30年の「セシウム137」などの放射性物質が大量に放出され、飛散する範囲は半径320キロにも及びます。北は岩手から南は神奈川、山梨まで、本州の関東以北は事故後、数十年にわたって土壌が放射能に汚染され、人間が住むことができなくなってしまう地域が出る可能性があります。

──枝野幸男官房長官は、記者会見で、1号機と3号機は水素爆発を起こしたものの、「格納容器は健全である」と言っています。いったい、内部では何が起きていたのでしょうか。

 通常であれば、原子炉圧力容器をおさめた格納容器のなかは、窒素で満たされており、決して爆発を起こさないようになっています。限られた情報から推定するしかありませんが、今回、炉心溶融によって発生した水素や酸素が逃し弁から格納容器内に放出され、格納容器内の冷却用プールの水も炉心の温度が高くなりすぎたために水蒸気となった。その結果、最大4気圧程度までしか想定されていなかった格納容器内が8気圧まで上昇してしまった。
 しかし、格納容器が爆発してしまっては、もろに放射性物質が飛び出すことになる。そこで、ベントという弁を開けて格納容器内の圧を下げることにしたわけです。放出された水素が建屋の上部にたまり、爆発した可能性が高い。こんなことが起きるなんて、私の記憶にある限り、世界でも初めてのことです。

──爆発の結果、福島第一原発から100キロ以上離れた女川原発(宮城)の敷地内でも一時、放射線量が通常の4倍以上の数値を記録しました。福島第一から流れたとも言われています。

 もともと、格納容器の弁の先には放射性物質を捕まえるフィルターがついています。フィルターは完全な気体である「クリプトン」や「キセノン」などの希ガスは捕まえられないため、弁を開けた時点で、ある程度の放射性物質は外に出ることになるのですが、今回はそのフィルターが多量の水分で目詰まりを起こして、吹き飛んでしまった可能性が考えられます。そのため、ヨウ素など本来なら外に出るはずのない放射性物質も飛び出しているのではないでしょうか。今回、周辺で被曝した人たちのなかには、体や衣服に付着した放射性物質を落とす「除染」を受けた人もいましたが、長年、原発の現場で研究をしてきた私も除染を受けるほどの被曝をしたことはありません。すでに放射性物質は体内にも入っていると考えられます。

次のページ