七十二候<麋角解(さわしかのつのおつる)>。シカのツノは毎年生え替わっています‼ 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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七十二候<麋角解(さわしかのつのおつる)>。シカのツノは毎年生え替わっています‼

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じつは冬じゃないほうがカッコイイんだよね・・・

じつは冬じゃないほうがカッコイイんだよね・・・

雪に埋まらないよう平たい足をしています

雪に埋まらないよう平たい足をしています

トナカイゴケは勝利の味〜♪

トナカイゴケは勝利の味〜♪

ち、知恵の輪的な状態に・・・

ち、知恵の輪的な状態に・・・

なんかすごく近いような?

なんかすごく近いような?

クリスマスが終わりトナカイたちもホッとしている頃かもしれませんね。「麋(さわしか)」とは、ヘラジカなどトナカイの仲間を指すのだそうです。シカの魅力といえば、枝分かれした立派なツノ! 奈良の春日大社では、毎年勇壮な『鹿の角きり』も行われています。ところがシカ類のツノは、べつに切らなくても毎年自然に落ちて生え替わるというではありませんか。それなのになぜ、わざわざ切る必要が?!

「枝分かれ」は成熟したオトナの証!生え替わるたび立派なツノに

シカのツノは毎年生え替わるって、ご存じでしたか?
だいたい春に生え始めて夏まで伸び続け、秋には成長が止まって硬く丈夫になります。生後1年くらいで初めて生えるツノは棒のようなのですが、翌年には股ができ、翌々年には二股になり、次の年には三股になり・・・と、だんだん枝分かれして立派なツノに進化。「ツノの形成が生殖器の活動状態を反映」しているとされ、不妊や去勢によりツノの状態も変化するといいます。また、シカの種類によって生え替わる季節や進化の特徴が違います。『麋角解』の時季にツノが落ちるのは、トナカイ系のシカ。ちなみに日本ジカのツノは、早春に落ちるそうです。
ツノは片方ずつ落ちるようです。動物園で撮影された動画などを見ると、普通に歩いているときにポロッといきなり足元に落ちてきて、びっくりした(ように見える)シカは急に動きが早くなったりしていました。重いツノが1本だけ残っている数日間は、バランスが悪くてやや歩きにくそう。とれた箇所は、血がにじむことはあっても流血したりはしないようです。
人間でいえば、乳歯が抜ける感じでしょうか。いつとれるかわからない感じがちょっとイライラしますが、永久歯に生え替わることで虫歯や欠けた歯をリセットできてたすかった〜!という方も、けっこういらっしゃるのでは。毎年リセットできるなんて、シカという生きものにとってツノはそれくらい重要なモノなんですね。

サンタクロースのそりを引くトナカイは全員メスってホント!?

トナカイの大好物は、『トナカイゴケ』と呼ばれる地衣類(苔ではなく、藻類と共生した菌類の仲間)。日本でも、乾燥させたものが鉄道ジオラマの樹木に使われたり、クリスマスリースの土台になったりしています。トナカイが住む寒い地域では、冬になると限られた食べ物しか得られません。さらに近年の温暖化で、地表の雪が溶けたり凍ったりを繰り返して硬くなり、地中の食べ物を掘り出しにくくなっているそうです。そんな冬のさなか、炭水化物豊富なトナカイゴケは貴重な活力源なのです。
強い者が食糧をゲットするのは動物界の常識ですね。シカ類の場合は、武器(ツノ)をもつ大人のオスが圧倒的に有利。ただでさえ体格がオスの半分くらいしかないトナカイのメスは、あっという間に飢え死にしてしまいそうです。そこで慈悲深い神さまは、なんとトナカイだけメスにもツノ(←小ぶり)をプレゼント! しかもそれだけじゃ勝算が微妙と思ったのか、オスのツノは子づくりが終わって冬になると同時に落としてしまい、メスのツノだけ春まで生えているようにしたのです。こうして、子連れの母トナカイやツノが未熟な若トナカイも、頑強なオスを押しのけて食事にありつき、冬を越せるのでした。そもそも大人のオスだって、かつてはお母さんに育てられた身。トナカイのツノは、こんなふうに次世代に貢献しているのですね。
ところでもうお気づきかもしれませんが・・・
クリスマスの時期は、オスのトナカイには立派なツノがありません。ということは。そう、サンタクロースのそりを引いているトナカイは、基本的にメス!または、大柄だったら「去勢されたオス(←ホルモンの関係でツノが落ちない)」という結論になりそうです。赤鼻のトナカイとして有名なルドルフくんは、やっぱりそのどちらかだったのでしょうか。

ツノは守ってくれる完璧な盾!けれど頑丈すぎて危険なことも

『鹿の角きり』は、江戸時代初期から続く勇壮な伝統行事。発情期をむかえたオスのシカが、互いに突き合って死傷したり人に危害を加えたりするのを防ぐ目的で始められたといいます。現在、奈良の春日大社では毎年10月に角きりが行なわれ、たくさんの観光客が訪れます。ゴザに押さえつけられてのこぎりでゴリゴリ、とちょっと可哀想な姿にも見えるのですが、完成形のツノには血管も神経もないので痛くないとのこと。神の使いとされるシカですから、切るのは神官役で、その後ツノは神前に供えられます。
それにしても、自然にポロリと落ちるのを待てないほど、シカのツノは危険なのでしょうか?
狭い場所ではいかにも引っかかって動けなくなりそうですが・・・じつは自然界でも、自分のツノによって命を落とすシカがけっこういるらしいのです。シカの枝角は丈夫で弾力があり、あらゆる衝撃から頭と目を完璧に守る自然の盾ともいわれています。戦いの場面ではがっちりと組み合い、自分の全体重をグイグイとかけていきます(なのでたいてい、大きくて重い方が勝つようです)。それほど頑丈な武器なのですが、ときにしっかり絡まりあって二度とはずせなくなることも! 両者とも動けず、そのまま餓死したりオオカミなどに襲われたりする可能性大・・・なかには、強い方が死んだ相手を引きずったままなんとか生き延びていた例もあるといいます。こうなったら一刻も早くツノが落ちてほしい状態ですね。

ヘラジカは決まった「墓場」にツノを落としに行く?

カナダには、抜け落ちたヘラジカのツノが確実に見つかる場所が数多くあるそうです。そこには全身の骨も見つかることから、ヘラジカが「墓場」としても利用しているのではないかと考えられているのだとか。役目を終えたツノを落としに行き、ツノが待つ場所に死にに行く・・・シカにとって、あのツノは魂の一部なのかもしれません。
奈良公園などでシカに会ったら、ツノの分かれ具合にもぜひ注目してみてくださいね。
<参考>
『シートン動物誌7』今泉吉晴・監訳(紀伊国屋書店)
『生命をつなぐ(ナショナルジオグラフィック日本版 2016年1月号より)』パトリシア・エドモンズ


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