「賀喜」「嘉喜」などと表記されることもあるカキ。「福を『かき』込む」おめでたい食べ物として、お正月料理に取り入れる地方も多い食材です。


ちなみに、一般的に食用とされるカキは「マガキ」という種類。病害に強く、かつてヨーロッパのカキが病気で壊滅状態になった時、日本から種カキを移植したことでも有名ですね。
「Rがつかない月にはカキを食べるな」ということわざがありますが、これはマガキが産卵期を迎える夏には身がやせるためとも、生殖巣が発達して中毒を起こしやすくなるからとも言われます。
よく似たことわざとして、日本では「花見を過ぎたらカキ食うな」などと言うようですよ。
このマガキと入れ替わるように、旬を迎えるのが「イワガキ」。
別名「夏ガキ」ともいわれ、春から秋口にかけて出荷されます。
加熱用と生食用があります
加熱用と生食用があります

カキに「あたる」とは? 「生食用」と「加熱用」の違いとは?

かつて、戦後まもない頃は、東京湾産の天然カキが味わえたそうですが、現在は天然のマガキといえばサロマ湖など北海道産がほとんどになっています。
水質管理などの側面から、養殖ものに利点があるともいわれるカキ。
よく「カキはあたりやすい」と言われますが、それは水質に左右されやすいカキの生態が影響しています。
カキは、殻を開閉しながら大量の水を体内に取り入れ、水中にいる生き物をえさとして摂取しています。
その過程で、有害な物質を取り込んでしまうことがあるのです。もちろん、一定以上の有害物質が含まれたカキは検査ではじかれ、出荷されないのでご安心を。
それでもリスクを完全にゼロにはできないため、「運悪く」あたってしまうことがある、というわけです。
スーパーマーケットの店頭などでよく見かける、殻を取り除いた「むきガキ」。以前はもっぱら加熱用だったむきガキですが、流通や加工技術の進歩で、生食用のむきガキも出まわるようになりました。
この「加熱用」と「生食用」のむきガキ、使い分けたほうがいい理由があります。なぜなら、「生食用」は殺菌のため、滅菌した海水の中で一定の時間活かしておいたものだからです。「あたる」心配は減らせますが、そのぶんうまみは少なくなっているのだとか。
加熱用のむきガキは、そうした工程を経ていないため、カキならではの濃厚なうまみが残っています。
加熱する料理には、「加熱用」と明記されたむきガキを使ったほうが、美味しく仕上がるというわけですね!
話が進むにつれ、カキの歴史から「食べること」に近づいてきました。
続く後編では、カキの美味しい食べ方についてご紹介します!

カキフライには、ぜひ「加熱用」のカキを
カキフライには、ぜひ「加熱用」のカキを

参考:成瀬宇平「47都道府県・伝統調味料百科」(丸善出版)
野本寛一編「食の民俗事典」
マグロンヌ・トゥーサン=サマ(玉村豊男監訳)「世界食物百科」(原書房)
アレクサンドル・デュマ(辻静雄・林田遼右・坂東三郎編訳)「デュマの大料理事典」(岩波書店)