映画「サウンド・オブ・ミュージック」ご家族でどうぞ。
映画「サウンド・オブ・ミュージック」ご家族でどうぞ。
「サウンド・オブ・ミュージック」のサントラ。《マイ・フェイバリット・シングス》の原曲をどうぞ。
「サウンド・オブ・ミュージック」のサントラ。《マイ・フェイバリット・シングス》の原曲をどうぞ。
ジョン・コルトレーン『マイ・フェイバリット・シングス』もぜひ、聴いてください。
ジョン・コルトレーン『マイ・フェイバリット・シングス』もぜひ、聴いてください。

 「名作」「傑作」という言葉は、よく聞くけれど、誰が、どうやって決めるのだろうか。

 中山康樹さんと話しているときに、「なんども、聴いてしまうレコードって、あるでしょ?それが、名盤です」と言われたことがあるけれど、たしかに、頷けるものがある。

 すげえ!かっこいい!と思っても、あまり聴かないものもあれば、よくわからないんだよな、と思いながら、気づくとよく聴いているものもある。いかがですか?

 ところで、人類の文化の至宝といわれるような作品がある。たとえば、学校で習ったり、年表に出てくるような作品だ。

 誤解を覚悟でいえば、世界文学全集に入っている傑作と呼ばれる作品群がある。「罪と罰」とか「ハムレット」とか「赤と黒」とか「ボヴァリー夫人」などなどだ。

 あの、こんなこと尋ねるのはなんですが、読んだこと、ありますか?

 正直な気持ちでいうと、わたし、一応、読んでます。加えると、「白痴」も「白鯨」も読んでます。あ、気づいたら、です、ます調になってるな、これは、まずい。

 もう一度、正直な気持ちでいうと、これらの作品は、けっこう面白い。たしかに、読んだのは、学生時代だったので、「赤と黒」や「ボヴァリー夫人」は基本的に不倫の話で、それほど、恋愛の経験もなかったのだから、どこまで理解できていたのか、はなはだ疑問だが。想像の世界では、楽しめた。もちろん、「罪と罰」のように殺人の経験もない。ましてや、「白鯨」のように、荒海へと航海に出て、凶悪な悪の権化のような「白鯨」と戦った経験もないけれど、面白かったという記憶がある。では、夜も寝ずに夢中で読んだかというと、そうはいかない。途中でやめることができず、テストの前の日に、勉強もしないで読んでしまった本というのもあるが、それとは、少し、違う。もう一度、正直にいうと、独りでは読みきる自信がなくて、友人と一緒に、ここまでは、読んでおこう、などと約束しながら、必死に読んだというのが実情だ。読書サークルのようなものだ。

 ここで、気づいたのだが、作者名を書いていない。CDだと、タイトルとアーティスト名を書く事にしているが、世界名作文学だと書かなくてもよいかな、と思う。スタンダールだのメルビルだのって、必要ですか?

 ネットで、グーグルとかヤフーとかで検索すれば、すぐ出てきますよね?このサイトを読んでいただいてる方なら、言うまでもないかもしれない。

 読んだということを自慢しているわけではないんです。「カラマーゾフの兄弟」も「レ・ミゼラブル」も読んでないのだから。

 ちょっと、待てよ。外国文学ばかりだな。「源氏物語」も、現代語訳で「明石」までしか読んでない。

 みなさんは、読んでますか?これ、いじめてるわけではないんです。

 では、『カインド・オブ・ブルー』を聴いたことがある方ならわかると思いますが、こんな名盤、聴いていないなんて、もったいないですよね。

 『ビッチェズ・ブリュー』を聴いていないという人がいたら、君は、もっと、幸福になる切符があるよ、と言ってあげたくなる、でしょ。

 「源氏物語」とか「カラマーゾフの兄弟」とか、長すぎるよ、という声が聞こえてきたら、こう言いたい。「好色五人女」なんて、短篇集ですよ。

 ひとつひとつは、数頁、あっというまに読めてしまう。

 でも、西鶴を読んでいる人って、どれくらいいるのだろうか?

 外国文学は、翻訳だから、現代でも読みやすい言葉になっているが、江戸時代以前の日本だと、口語と文語というのがあって、読みにくい、というのもあるかもしれない。

 夏目漱石あたりは、書店の棚にもたくさん並んだいるから、口語と文語というのは、大きな壁なのかもしれない。

 さて、映画「サウンド・オブ・ミュージック」、ごらんになったことがあるだろうか。映画を観たことがなくても、《ドレミの歌》は聞いたことがあるだろう。

 ジャズ・ファンだったら、コルトレーンの《マイ・フェイバリット・シングス》は知っているだろう。

 そう、これらの曲は、この映画「サウンド・オブ・ミュージック」から生まれたのだ。

 いや、正確にいうと、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」から生まれたのだ。

 1959年ブロードウェイで上演されたのがはじまりで、映画は65年の公開だ。

 音楽は、作曲家リチャード・ロジャースと作詞家オスカー・ハマースタイン2世のコンビ。「回転木馬」「王様と私」などのミュージカル作品があり、どちらも映画化され、ヒットしている。

 第38回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、編集賞、音楽賞、録音賞など5部門で受賞している。

 こう書いてくると、見ていない人たちにとって、どんどん敷居が高くなってしまうような気がしてきた。

 まずは、ビデオ・レンタルでもよいので、見て欲しい。数百円で観ることができるのだ。

 この映画「サウンド・オブ・ミュージック」、傑作とか名作といわれるたぐいのものであるけれど、今見ても楽しいと思う。手を伸ばせばよいだけだ。

 ぼくの友人に、ミュージカルが苦手という人がいて、どうして、さっきまでふつうに話していたのに、突然、歌いだすのだ!と怒っていたが、この映画では、かなり自然に物語と音楽が融合されていて、違和感などないと思う。

 いつも、前置きが長くなってしまって、申し訳ないが、今回は、この映画の登場人物たちの末裔が来日するという紹介だ。

 オーストリア出身のマリア・フォン・トラップによる自叙伝『トラップ・ファミリー合唱団物語』が原作だ。

 この文章を書くにあたり、以前、テレビで放送された、ドキュメンタリーを見直した。『サウンド・オブ・ミュージック マリアが語る一家の物語』映画でジュリー・アンドリュースが演じた家庭教師「マリア」(原作者)と同じ名前のこの家族の次女「マリア」92才へのインタビューだ。

 この家族の父親は、貴族で軍人、大佐だ。家には27つもの部屋があったという。しかし、母親が早くに亡くなり、そこへ、孤児のマリア先生が、家庭教師としてやってくるというところから、物語ははじまる。

 自叙伝とミュージカルでは、大きなストーリーは同じだが、大佐の性格描写などに違いがあるとのことだ。映画では、厳格な軍人として描かれているが、実際には、いろいろな楽器を演奏し、子供たちにも指導してくれたという。

 時代は、1938年第二次世界大戦の前夜。場所は、オーストリアのザルツブルク。アルプスの麓だ。

 映画は、ナチから逃れるために、コーラス隊を作って、亡命するところで映画は終わるのだが、実際は、それからが大変だ。先程のドキュメンタリーで知ったのだが、戦争のため一文無しになり、アメリカに亡命してからは、生活のためにコーラス隊を作って、公演旅行をはじめることになる。

 そして、今年、そのフォン・トラップ・シンガーズが、マリアのひ孫の世代に引き継がれ、来日するという。[次回5/22(水)更新予定]

■公演情報は、こちら
http://www.tate.jp/event/vts/