
「原発」に関する記事一覧


ジャーナリスト大谷昭氏 橋下徹大阪市長は「関電に弱みを握られたのでは?」
再稼働問題に揺れる大飯原発。ゴールデンウィーク前に、「関西地区の夏の電力は不足する」という関電の試算結果が出ると、橋下徹大阪市長は、 「再稼働をやめればどういう負担が生じるか認識してもらったうえで、府民に是非を判断してもらわなければいけない。税額は1人千円程度になる」 と唐突に節電新税の創設をぶち上げた。市民から徴収した税金を財源に、大幅に節電した企業などに奨励金を払うというプランだ。 脱原発の立場を取っていた橋下氏のこの言動に対し、「弱みを握られるなど、裏で関電と何かあったのではないか、と疑っています」と分析するのは10年前から橋下氏をよく知るジャーナリストの大谷昭宏氏だ。 橋下氏は府知事時代、関電元会長の秋山喜久・関西経済連合会相談役の呼びかけで設立された「関西広域連合」に参加した。関電元役員を副知事に抜擢するなど震災以前までは関電と"蜜月"関係にあったという。 だが、昨年、大阪市長になると、飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)、古賀茂明氏(元経産省官僚)、河合弘之弁護士(脱原発弁護団全国連絡会代表)らそうそうたる『脱原発派』の専門家をブレーンに招き、「大阪府市エネルギー戦略会議」を設置した。 「秘書に大量の原発本を買い込ませた橋下さんは連日、不眠不休で猛勉強してはったな。午前3時過ぎでもメールを次々と送り、古賀さんらブレーンを質問攻めにし、『いつ寝ているのか』と驚かせたほどでした」(大阪市役所職員) 原発だけではない。行財政改革や大阪都構想など、橋下氏が東京など遠方から呼び寄せ、「高い授業料」を払っている「橋下ブレーン」は現在、53人いるという。「大飯原発の件では、橋下氏はパートナーである松井大阪府知事と一緒に、提言を持って官邸に乗り込み、その後、野田政権を批判する会見をした。選挙をにらみ、政権にケンカをふっかける政治パフォーマンスはさすが『トリックスター橋下』です」(府市統合本部関係者)

「事故で世界中が破滅」福島第一原発4号機に危機感を募らせる国際社会
5月5日、北海道電力泊原子力発電所3号機が停止し、国内全50基の原発が停止した。しかし、これで安心といったわけではなく、福島第一原発4号機の危険性を世界が危惧している。 米上院エネルギー委員会の有力メンバーの一人、ロン・ワイデン議員は4月6日に福島第一原発を視察。その後、16日付で4号機の原子炉建屋が再び大きな地震や津波に見舞われれば、使用済み燃料プールが崩壊し、「当初の事故より大規模な放射性物質の放出が起こる恐れがある」と警告した。 さらに、ニュースサイト『ハフィントン・ポスト』は、4号機のプールにある核燃料棒が冷却されずに放射能が放出された場合、そこから出るセシウムの総量は、チェルノブイリ事故で出た量の少なくとも10倍になる、との専門家の分析を紹介した。 これほどまで国際社会で福島第一原発4号機が注目される理由を、元スイス大使で東海学園大学名誉教授の村田光平氏はこう言う。 「いまや4号機の存在は、北朝鮮のミサイル問題にも劣らぬ、全世界にとっての安全保障上の大問題になっているのです」 さらに村田氏は今年3月、参院予算委員会の公聴会に公述人として出席し、「4号機が事故を起こせば、世界の究極の破局の始まりと言える」と警告している。 東電は4月26日、4号機原子炉建屋の倒壊危険性を否定するリリースを発表。しかし、村田氏が「事故を起こした国や東電の信頼は世界中で地に落ちています。発表をうのみにする国など、どこにもありません」と言うように、米国では福島第一原発の現状と事故の収束に向けて、世界のエキスパートを集め、中立した独立機関としての評価委員会を作る動きがある。 村田氏は善処を求める書簡を野田佳彦首相にも送った。だが、いまのところ、具体的な動きはない。









廃炉技術開発「広く技術情報集める」はずが......実情は「3社体制」
福島第一原発の廃炉に向けた、政府・東京電力の中長期対策会議は昨年末、今後30年から40年をめどに廃炉を実現するロードマップをつくった。この難事業に向けて、今後は国内や海外の技術も広く導入していかなければならない。 技術開発については、原子炉プラントメーカーの東芝、日立GEニュークリア・エナジー、三菱重工業の3社を窓口に情報を公募し、どの企業にどのような技術があるか、リストアップが進められている。 ところが、その「3社体制」に疑問の声が上がっているのだ。事情に詳しい研究者が語る。 「国内外から広く技術情報を集めると言いながら、国の予算をメーカー3社がほぼ独占しています。原子炉に詳しい3社が中心になるのは、ある程度仕方ないと思いますが、事故が起きた原子炉のメーカーには、東電同様に事故の責任があるでしょう。原子力ムラの体質が依然として残っているのではないか」 さらに、3社が関連技術を独占するのでは、という懸念も出ているのだ。 「メーカーは表向き技術情報を共有したいと言っていますが、開発者の権利が十分に守られるのか、非常にあいまいです。結果的に、プラントメーカーだけが得をし、われわれは単なる"外注"先になるおそれもあります」(前出の研究者)
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止まらない東電の人材流出 原発技術者は韓国企業から豪華接待
東京電力の人材流出が止まらない。2011年度の依願退職者が、例年の3倍を超える約460人に上ることが明らかになった。20代~30代の大卒社員が中心で、会社の将来を悲観して転職したとみられている。 しかし、東電を襲う人材流出は若手だけにとどまらない。 複数の原発で勤務経験があり、将来を嘱望されている原発技術者の男性Aさんは、1月末、東京・赤坂にある高級日本料理店に、原発に関連する韓国の大手企業から呼び出しを受けたという。行ってみると、明らかに自分より年長の男性2人が下座で待ち構えており、こう切り出した。 「Aさん、うちに来てください。必ずやいいことがある。日本の原発の技術やノウハウは、韓国の何倍、何十倍も優秀です。お金の心配はしないで、飛び込んできてください」 そう言いながら、ぶ厚い白い封筒をいきなり差し出してきたというのだから驚きだ。Aさんは封筒には手をつけず、 「いま、そんな考えはありませんから」 と返答したという。 2人は、どちらも日本語が堪能で、そう簡単にはあきらめてくれない。今度は、「年俸5千万円」「月に2回の帰国と、往復航空券はビジネスクラス」「韓国の住まいは高級マンションで、運転手付きの車を用意」など次々に新たな条件を出してきたという。 2次会を断って帰ろうとしたAさんには、手土産が用意された。帰宅後、家族に内緒でこっそり中を見ると、菓子折りの中には現金が入っていたという。

電気料金値上げ 電力業界にひそむ不可解な「カラクリ」
福島の原発事故以降、稼働中の原発は1基となり、日本の発電量は火力発電が9割近くになった。東京電力は、電力不足を火力発電で補うために、燃料費が年8千億円以上も増えると説明し、企業向け電気料金の平均17%値上げに踏み切った。今後、家庭向け電気料金も引き上げが必至だ。東電の西沢俊夫社長が昨年12月の記者会見で、「値上げは事業者の義務であり、権利でもある」と放言したのも、実は電力業界の不可解な"カラクリ"があるからだ。 電気料金は、国が定めた「燃料費調整制度」に基づく。この制度は、燃料の値上がりや為替変動による輸入価格の上昇分を自動的に上乗せできる。つまり、購入費用が高くなれば、それを利用者に押し付けられる"おいしい仕組み"だ。 3月29日に発表された5月分の家庭向け電気料金でも、原発を持たない沖縄電力を除くと9社中3社で値上げし、4社で値下げする。値上げの主な理由は原油価格の高騰だ。

「貿易立国」崩壊? 「原発ゼロ」がもたらす貿易赤字
日本の貿易収支と経常収支が最悪の赤字を記録した。貿易収支は輸出額から輸入額を差し引いた金額で、1月は過去最大となる1兆3816億円の赤字だった。海外とのサービスのやりとりや投資による収支などを加えた経常収支も4373億円の赤字で、これまた最悪となった。 どちらも2月こそ黒字に転じたが、3月1~20日では、貿易収支が赤字に戻ってしまった。 原因は簡単で、輸出が振るわないうえに輸入が増えたから。輸出は、欧州危機の影響を受けて中国を中心にアジア向けが落ち込んだ。 一方で、電力会社は火力発電所の稼働を増やす。ある金融機関の推計によれば昨年度、燃料となるLNGや原油などの輸入が前年度に比べて1.6倍にふくらんだ。 つまり、自動車や電気製品を世界中に輸出し、経済成長を主導した「貿易立国」が成り立たなくなりつつあるといえる。 問題は、輸出減少・輸入拡大の傾向が今後も続くとみられていることだ。 輸出は、成長著しい新興国向けで伸びても価格競争が激しくなることから、 「日本が得意とする自動車も電子部品も価格が落ちていくでしょう」(クレディ・スイス証券の白川浩道・経済調査部長) そして輸入も、「原発ゼロ」が実現すれば、LNGや原油の輸入は高水準のまま推移することになる。 「需要が増えているので、LNGや原油の価格の暴騰は考えにくい。年2~3%ずつ値上がりしていくでしょう」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至(あくたともみち)・主任研究員)

拙速な原発再稼働「妥当」判断 「仕掛け人」は仙谷氏
野田佳彦首相と枝野幸男経産相ら3大臣は4月13日夜、懸案の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を「妥当」と判断し、強行突破する方針を決めた。 地元自治体などの「拙速」という非難の嵐をものともせずに突き進む野田政権には、経産省OBで原発の再稼働を容認する立場の福島伸享(のぶゆき)衆院議員(民主党)でさえ、こうあきれる。 「(再稼働問題を)首相と3大臣らが政治判断するやり方は野蛮以外の何物でもない。あまりに稚拙です」 再稼働の是非を決める協議はこれまで計6回、野田首相と枝野経産相に藤村修官房長官、細野豪志原発担当相の4閣僚を中心に行ってきたが、協議には実は"裏参謀"がいた。 「協議を仕切ったのはオブザーバーという形で参加していた仙谷由人政調会長代行です。それを再稼働推進派の今井尚哉資源エネルギー庁次長や深野弘行原子力安全・保安院長、古川元久国家戦略担当相らが、かいがいしくサポートしていました。原発輸出の旗振り役である電力会社と強いパイプがある仙谷さんは経産省にとって頼れる味方で、14日も枝野さんと福井入りしました」(官邸関係者)

原発事故後、政治家にも広まる「東大話法」
関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼動へ向けた動きが急だ。国内54基の原発のうち唯一稼動している北海道・柏原発3号機も5月5日には停止し、「原発ゼロ」社会は目前だが、野田政権はその前になりふり構わず、再稼動に道筋をつけるつもりだ。なし崩し再稼動をこのまま許していいのか。 原子力発電所に絶対の安全はない。それが、昨年の福島原発の事故で背負わされた大きな代償と引き換えに学んだ教訓だったはずだ。「安全対策はこれからします。だから原発は安全です」という理屈は、「日本はこれから財政再建します。だから日本の財政は健全です」と言っているのと同じだ。こんな欺瞞がまかり通るなら、確かに何だってできてしまうだろう。 もともと「再稼働ありき」の野田政権にとって、安全対策は二の次でしかない。それは、枝野経産相のこんな発言からも明らかだ。 「原発を稼働しなくても、電力の需給に余裕があるとか、若干の節電のご協力をお願いして十分乗り切れるなら、(原発)開ける必要はない」(6日の閣議後の会見) これは裏を返せば、原発を再稼働させるかの決め手は電力が足りるかどうかであって、「安全」でないと言っているに等しい。 「危険」を「安全」に、「不安」を「安心」に言い換える。どんなにいい加減で、つじつまの合わないことでも、自信満々で話す。わけのわからない理屈を使って相手をケムに巻き、自分の主張を正当化する......。 そんな「ごまかし言語」を駆使した言葉の使い方を、東京大学の安冨歩教授は「東大話法」と名づけた(著書『原発危機と「東大話法」』〈明石書店〉)。 安冨教授によれば、この話法は東大に限らず日本中に蔓延しているが、原発事故後、多くの東大関係者らがそろいもそろって、こうした欺瞞的な言葉の使い方をしていると気づいた。 事故直後、「長期的には悪影響がありうる」と言わずに、「ただちに影響はない」と言い換えた枝野経産相もまた、典型的な「東大話法」の使い手だ。 東大話法の特徴は、欺瞞的な言い換えで国民をだましているのはもちろん、自分自身をもだましていることだという。 「枝野さんの発言がぶれているように見えるのは、世論がこれでは納得しないだろうとわかっているので、彼なりにバランスをとろうとしているのでしょうが、東大話法を駆使していると、自分がしていることが正しいのか、間違っているのかさえ、わからなくなってくる。だんだん、『みんなが正しいと言うんだから正しいのだろう』という、極めて無責任な判断停止が起きてくるのです」(安冨教授)