水野美紀
水野美紀 「はんぶんこちない!」チビの言葉に衝撃を受けたワケ
水野美紀さん/俳優。ドラマ・映画・舞台で活躍中。<出演情報> NHK 連続テレビ小説「スカーレット」に出演中(NHK総合 月曜~土曜 朝8:00~)。レギュラー番組 讀賣テレビ「水野美紀の映画生活(シネマライフ)」毎週金曜22:54~<関西ローカル> http://www.ytv.co.jp/cinemalife/
イラスト:唐橋充
42歳での電撃結婚。そして伝説の高齢出産から2年。母として、女優として、ますますパワーアップした水野美紀さんの連載「子育て女優の繁忙記『続・余力ゼロで生きてます』」。最近チビの言葉が増えてきたと喜ぶ水野さんだが、そのチビの言葉に衝撃を受けた理由とは……。
* * *
「ちょっとまてねー、いかないようにちてね」
「ママ、いかないよ! 抱っこ抱っこ!」
「ママ、おちごと、がんばったの?」
ちびの言葉は日々増えている。
母「オムツ変えようか」
ちび「オムツかえないよー」
母「お風呂入ろっか」
ちび「おふろはいなくないよ!」
何となく会話も成立するようになってきた。
もうすぐクリスマス。ちびは「サンタさん」を認識するようになった。
絵本の中のサンタさん。街中に飾られているサンタさん。
赤い服を着て帽子を被った、白いお髭のキャラクターは「サンタさん」であると学んだようだ。
しかしまだ、サンタさんがクリスマスにやってきてプレゼントをくれる、というところまでは結びついていない。
今年のクリスマスはまだ、パパからプレゼントを渡す予定だ。
来年の今頃は、そろそろサンタさんからのプレゼントを演出する頃合だろうか。
小一の姪は、「毛糸を編んで何でも作れるやつをください」と紙に書いて、七夕の短冊のようにツリーにぶら下げていた。
10代から一昨年まで、クリスマスを型どおりに祝うなんて小っ恥ずかしくて嫌厭していたもんだが、今やちびのためにと1カ月前にはツリーを飾り、満喫する気満々だ。
子供がくれるモチベーションはすごい。
多分我々は、ずっとサンタが来たと言い張り、ハラハラしながらプレゼントを枕元にセッティングするだろう。
自分が子供の頃、朝起きて枕元にプレゼントを見つけた時のあの何とも言えない嬉しさは、今でもはっきり残っている。
しかし、日々全力で世話をしている親よりも、年に1回、プレゼントを1個くれるだけでヒーローになれるんだからサンタはずるい。
その点、アンパンマンやしまじろうは日々貢献してくれるヒーローだ。
アンパンマンの様々なグッズに毎日助けられている。
最近お風呂を嫌がるちびに、アンパンマンのバスボムを見せて
「お風呂に入れよっか!」
と言うと喜んで風呂場まで走って行って服を脱ぎ始める。
しまじろうは教材を取り寄せるとDVDが付いてきて、「おでかけ おでかけ おててをギュ」とか、「半分こ 半分こ 二人で仲良く半分こ」などのお歌で、おでかけする時は手をつなぎましょうね、とかお友達とおやつやパンを半分こして食べましょうね、といった、生活に密着した細かい知識を歌で学べるようになっている。
他にも、食べたら歯ブラシしましょうね、外から帰ったらうがいと手洗いをしましょうね、お野菜も食べましょうね、などの、基本的なことをしっかり楽しく教えてくれるのだ。
特に「半分こ」の歌の教材の時には、マジックテープで半分に分けられるおもちゃのパンとドーナツも付いてきて、ちびはこれが気に入り、
「ママ、はんぶんこちて」
と、駆け寄って来ては、そのおもちゃを半分こした。
こうして学ぶことによって、きっと保育園でもお友達と何かしらを半分こしているに違いない。素晴らしい。
そんなちびを、大阪の出張に同行させた。
数年前に大阪に転勤した友人が住んでいるので、そこにお世話になることにしたのだ。
その友人には小2と4歳の娘さんがいる。
撮影のある日中、ちびをその友人が預かってくれた。
保育園と実家以外の場所に長時間預けるのは初めてだったので心配もあったが、ちびは終始ご機嫌に過ごしたようで、
「ほんっとにいい子だったよー」
と友人は言ってくれた。
が、
「でも一回だけね……」
え、なになに?
「下の子とおせんべい半分こして食べさせようとしたら泣いちゃって」
え?
「おせんべい半分に割ったらぎゃーー―って泣いちゃって。はんぶんこしたくなかったみたい」
そんなバカな。あんなにしまじろうから半分この精神を学んだではないか!
衝撃だよ、母は。
私は自分のカバンからおせんべいを取り出し、ちびを呼び寄せた。
「おせんべい食べよっか」
「たべる」
「じゃ、◯◯ちゃんとはんぶんこね」
パキッ、とおせんべいを割ったその瞬間。
「ぎゃーーーー!!! はんぶんこちないーーー!!!」
と、ちびは烈火のごとく泣き叫ぶではないか。
しまじろうは「半分こすると楽しいね」と教えてくれたのに、どうやらちびは「半分こすると半分減る」と学んだようだ。
「はんぶんこちない」ときたもんだ。
子供の教育というのは一筋縄ではいかないぞ!!
その片鱗を覗いた令和元年、冬であった。
それではみなさま、どうぞそれぞれのクリスマス、お正月、楽しく暖かく過ごされますように。私も、家族や友人と、コタツで鍋をつつく予定でございます。
来年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
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dot.
2019/12/19 11:30