理工系大学として137年の歴史を有する工学院大学は実社会で活躍する人材を数多く輩出してきた。
専門的な学びや研究を、就職にどう結び付けているのか。
同大学におけるキャリア形成と就職支援の取り組みを探った。
工学院大学の学生たちにとって、学びのフィールドは教室の中にとどまらない。課外活動に熱中する学生もいれば、寝食を忘れて研究に打ち込む学生もいる。どんな分野に情熱を注ぐかは人それぞれ。共通するのは「あらゆる場面で、自ら学び続ける」姿勢だ。
同大学では、学生たちの興味や探究心が赴くままに学びを深められる機会を豊富に用意している。学生たちはそこで成功や失敗を積み重ねることで、自ら学び続ける力を培い、実社会へとはばたいていく。
学生時代のあらゆる経験が成長の糧になった
門馬慎さん(機械システム工学科4年)も、学生時代の多様な経験を通じて成長を遂げた一人だ。この春、国内の総合電機メーカーへの入社を決めた。
子どものころからモノづくりが好きで、SEだった父親の影響でインターネットがごく身近な環境で育った。「実際に手を動かしモノをつくる経験を積みながら、ITやシステム開発についても学べる工学院大学を目指したのは、自然な選択でした」と話す。
学生グループによる理工学の知識を活(い)かした創造活動「学生プロジェクト」の存在も進学の後押しになった。「大きなプロジェクトに関わって、モノづくりに挑戦してみたい」。そんな思いから門馬さんはソーラーチームに所属し、車両開発に加わった。
「図面を引いても思い通りの形に仕上がらないことが多く、試行錯誤の日々でしたね。新しいモノを作り出すことは、正解のない問いへの挑戦でもあります。けれど苦労したからこそ、マシンが稼働したときの達成感はひとしおでした」
「将来は大きなプロジェクトのマネジメントを担ってみたいですね。ITは無形の技術ですが、学生時代に実体あるモノづくりを経験したことは必ず役立つはずと思っています」
伴走者がいたおかげで研究と就職活動を両立
大学院で学びを追究し、高い専門性を活かしたキャリアを目指す学生もいる。化粧品メーカーへの入社を決めた佐野桃花さん(化学応用学専攻修士課程2年)がその一人だ。
「大好きな化学や生物を学びたい。そして成果を医療や美容に活かすことができれば」という思いから工学院大学へ進学。そこで生命化学の奥深さにのめり込み、大学院へ進んだ。「現在の研究テーマは、再生能力を持つプラナリアの幹細胞を単離・培養する技術の開発です。ゆくゆくは再生医療に貢献できる領域であり、研究は驚きや発見の連続。新しい測定器を用いて細胞の解析方法を確立するなど大変なこともありますが、日々やりがいを持って取り組んでいます」
研究活動に没頭する一方で、就職活動にも向き合わなければならなかった。同学年の友人たちが就職活動に取り組み始めるなかで、何を、どこから進めるべきか。
「研究に費やす時間はいくらあっても足りません。効率的に就職活動を進めるために、大学院生限定のプログラムが助けになりました。グループディスカッション対策講座や、大学院生ならではの就職活動戦略を立案する集合講座、また定期面談では就職活動の進捗確認を通したアドバイスが受けられました。この支援を活用したことで、研究と就職活動をやり抜くことができました」
このほか就職キャリア支援センターでは、エントリーシートの添削や面接などの手厚い相談体制も整えている。佐野さんは書類選考や面接の対策で何度も同センターに通ったという。
「大学院に進学した私にとっては、研究の魅力を面接でわかりやすく伝えられるかが重要なポイントでした。その点、模擬面接などで講師の方から客観的な意見をもらえたので助かりました。内定先は愛用する化粧品メーカーの生産部門です。多くの人によりよい製品を届ける一翼を担っていきたいです」
一人ひとりのタイミングに合わせて適切な支援を提供
「学生たちはそれぞれの学科で専門性を身につけ、学業だけでなく課外活動まで興味の方向性も広がります。就職活動を一律に進めるのではなく、各自が動き出すタイミングに適切な支援を提供できるよう心がけています」
工学院大学就職キャリア支援部の佐野勇一郎部長は、支援のあり方をこう説明する。
「低学年の段階から、大学での学びと社会のつながりを意識することで、学生が主体的に自分のキャリアを考えることになり、就職活動も進めやすくなります。私たちは大学全体で学生のキャリア形成支援や就職支援となる機会を提供しています」
同大では就職キャリア支援センターと先端の研究に基づく教育を手掛ける教員・研究室、そして学生プロジェクトなど学生が主体となり活動する機会を支援する学生支援センターなど各セクションが連携。幅広い学びを得て成長した先に、専門性を活かした就職が実現するように体系的・多角的なサポートにあたっている。
高い専門性と、自ら学び続ける姿勢、そして学びを活かし社会に貢献したいという情熱。それらを兼ね備えた学生たちは、あらゆる機会を成長の糧として活躍していくだろう。
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