
中学受験の「生きる力」を問う新タイプ入試、相性のいい学校を見つけて 知窓学舎塾長・矢萩邦彦さんが語る
やはぎ・くにひこ/2万人を超える直接指導経験を生かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾を運営。多摩大学大学院客員教授(写真=本人提供)
中学入試に向け、わが子と相性のいい学校を見つけるにはどうすればいいのか。知窓学舎塾長・矢萩邦彦さんが語った。AERA 2022年10月10-17日合併号の記事を紹介する。
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最近、いろいろな学校で「新タイプ入試」が始まっています。従来の入試と違い、偏差値にとらわれず、その子の得意を生かして受験できるのが特徴ですが、全員に向く入試ではありません。まずは、新タイプ入試の特徴を知り、チャレンジするかどうかを考えるようにしてください。
日本の教育は今、大きく変わろうとしています。「生きる力」という言葉は随分と前から言われていますが、必要な力のとらえ方に変化が出てきたのです。
インターネットやAIが当たり前になった今の時代、速く正しく正解を導き出せる力というのは「生きる力」とは言えなくなりました。それはAIやコンピューターができることだからです。何をやるかを言葉で説明できることは、プログラムに変換できます。うまく言葉で説明できないことほど、人間の力が必要になります。技術は進歩しましたが予測不可能な世の中へと突入しています。
そんな世の中を「生きる力」とは、どのようなものなのか。OECD(経済協力開発機構)が分析したあるデータによると、世界で活躍する人が持っている三つの資質があるといいます。(1)異質な集団で交流する力(2)自律的に活動する力(3)相互作用的に道具を用いる力の三つです。
これらを育むための教育を行うのに必要なのは、知識の詰め込みではありません。
こうした世の中を背景に、大学入試の変化があります。本年度の入試では、私大現役合格者の半数以上が学校推薦型・総合型選抜による合格でした。今や一般入試組の方が少ないのです。この流れは中学入試にもきています。その中で生まれたのが新タイプ入試です。従来のペーパーテストでは測れない力を測る入試です。学校側は、模範解答のない問いで受験生を試します。この時に見ているのは、自学のアドミッションポリシーとの相性です。その子が導き出した解答から、学校の学びや校風に合う生徒を見ているのです。
ある学校ではリンゴが描かれた絵画を見て、「作者に聞いてみたいことを書いてください」という問題が出ました。この問いに明確な答えはありません。新タイプ入試はこうした出題が多く、「はっきりと答えが出ないと気持ちが悪い」と思ってしまうお子さんには向かない入試とも言えます。入試にはその学校の特色が表れます。入試問題を見て、相性のいい学校を見つけるのも一つの方法だと思います。
(構成/フリーランス記者・宮本さおり)
※AERA 2022年10月10-17日合併号