本来、柔軟剤はほのかな香りのはずだった。それが2000年代半ばごろ、残香性が強い海外製の柔軟剤がブームを呼ぶと、香りはどんどん強くなっていった。いまや、香りと共にボトルも一緒に派手になり、柔軟剤入り洗剤も発売されるなど、ニッポン中に柔軟剤のにおいが充満した感すらあるのだ。

 職場にあふれる柔軟剤のにおいで迷惑しているという男性(42)は、吐き捨てるように言う。

「そもそも、なぜ本人はあのにおいを『くさい』と思わないのか。洗濯しないほうがマシでしょう」

 この男性の言葉は決して八つ当たりではない。スメハラが厄介なのは、自分のにおいは自分では気がつきにくいという点だ。

「嗅覚は『順応』といって、長時間かいでいるとそのにおいになじみ、気がつかないことが多いのです」

 と体臭や汗の専門治療を行う「五味クリニック」(東京都新宿区)の五味常明院長は話す。

AERA 2013年7月22日号