電通過労自殺事件 多面的に展開可能な労働問題 なぜ民放テレビは淡白だったのか (2/3) 〈GALAC〉|AERA dot. (アエラドット)

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電通過労自殺事件 多面的に展開可能な労働問題 なぜ民放テレビは淡白だったのか

水島宏明GALAC

 これと比べて対照的だったのがNHKだ。電通で過去に同様の過労自殺が労災と認められたケースを紹介し、専門の弁護士の解説を加えるなどプラスアルファで厚みのある報道を繰り返した。NHKは11月に入るとキャンペーン的な報道を開始。11月1日「おはよう日本」、2日「クローズアップ現代+」、3日の「ニュースウオッチ9」で、電通のように一見働く者に優しい“ホワイト企業”を装いながらも実態はブラックな“隠れブラック企業”が蔓延していることを指摘。3日の「ニュース7」では評価を考えて残業時間を過少申告する電通社員たちの実態を特報した。さらに11月7日には「あさイチ」を放送中に強制捜査の着手を速報し、翌日の同番組でも時間を割いて触れた。全体的に局をあげて過労自殺の背景にある「長時間労働」の問題を解決すべきだという毅然とした姿勢を明確に示した。この点、民放では番組によって扱いつつも散発的報道に終始したのに比べ、局全体で視聴者に問題提起しようとする姿勢が際立った。

●囲み取材での配慮不足は否めないが 「働き方」への提言はNHKのみ

 11月7日の電通本社への強制捜査は、NHKも民放各局もこのニュースのピークとなった。そんななか、NHK「ニュース7」が電通前で囲み取材に応じた男性社員の顔を本人に確認せずに(民放各社がボカシを入れた一方で)「顔出し」で唯一放送。男性が後日会社から戒告処分を受けたとネットニュースが伝えた。「貧困女子高生」報道でも配慮不足を指摘されたNHKの記者たちだが、「取材に応じた人を守る」という意識の低さがまたも露呈した。こう続くのではNHK報道局は記者教育を根本から見直す必要があるだろう。

 上記の点を除けば、NHKが電通での過労自殺問題を受けて日本社会における「働き方」を見直すべきだと強い問題意識を見せるのは報道機関として健全だ。

 11月5日「週刊ニュース深読み」では「どう防ぐ?若者の過労自殺」と題して識者が提言策を討論し、いざという時の相談先も紹介した。長時間労働は解決すべき重大問題だという意識が明確で、高橋さんの死から1年経つクリスマスイブにNHKスペシャル「私たちのこれから」でも“"長時間労働”を特集するという。


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