図1 地上テレビ番組の輸出金額
図1 地上テレビ番組の輸出金額
図2 日本映画の輸出金額
図2 日本映画の輸出金額
図3 主要番組ネットワークの番組投資
図3 主要番組ネットワークの番組投資
表1 英仏の放送番組と映画の輸出金額
表1 英仏の放送番組と映画の輸出金額
表2 各分野におけるグローバル・プレイヤーの特徴
表2 各分野におけるグローバル・プレイヤーの特徴

 日本の放送事業者によるコンテンツの海外展開はどのような状況にあるのだろうか。データに基づいて概観する。

 わが国の「放送番組の海外販売」は、今なお過去最高を更新中であり、好調に推移している。その背景には、
・アベノミクスにおける大型補助金の充実により、キー局のみならず、地方局、制作会社含め、業界あげての海外意識の高まり
・直近までの円安為替レート
・グローバル市場におけるネット配信バブルの発生。わが国にもアニメを中心にその恩恵が波及 といったことがあげられる。  

 政策に関して、安倍首相は成長戦略についての2013年5月17日の講演のなかで、放送番組の輸出額を5年後までに3倍増(約200億円)にすることを掲げていた。今のトレンドのままでいけば、「〝リーマン・ショック並みの経済危機”あるいは“東日本大震災級の大災害”が起こらない限り」、その目標は達成できそうである。

 グローバル市場に関して、「ネット配信」には以前からも新興国やBRICSを中心に需要があったものの、その売買レートは安く、売り手側からすればあくまで放送局の放送権の付随的な扱いであったが、アマゾン・プライムやネットフリックスなどのようなグローバル・プレイヤーの本格参入と活動活発化によって、グローバル市場での需給バランスが変化し、そのレートも変化してきていると予想される。そして図1でも示されるように、短期間の間に「ビデオ化権」を上回る規模となっている。

 そのトレンドは、放送番組のみならず、わが国映画の輸出にも現れており、2015年は急激な伸びを示した(図2)。中国、東南アジアを中心に、欧米など世界各国に輸出が広がり、特に「アニメの配信」が伸びたと推察される。

●”グローバル市場”の特性 どこにチャンスがあるか?

 バブルのような現象は、過去にも、80年代の欧州放送市場民営化と市場開放時、80〜90年代のケーブル・衛星放送の拡張時など、長く映像産業の歴史を考えるときに、制度(例えば市場の民営化)や技術(新しい伝送路、技術規格など)の大きな変化によって、映像コンテンツに対する需要が急拡大することを背景として現れるときがある。

 また、マクロ経済動向にも影響を受けやすい。買い手の立場でいえば、自ら番組制作するか、他社から買い付けるかという大きな選択肢のもとで、買い付けを選ぶ合理性が必要である。他に代え難い圧倒的な内容の質の高さやオリジナリティ、コスト・ベネフィット、制作/調達時間のベネフィットなどに加え、為替の問題も無視できない。急速に放送市場が拡大するとき、コストや時間ベネフィットから、自社製作のみならず買い付けも併せて行わないと、編成に番組が足りない。今はそれがネット配信の世界で起きている。

 そもそも放送番組は映画に比べても、より地域密着、ローカルなコンテンツであることが指摘され、なかなか外国製番組がプライムやゴールデンといった各放送局が力を入れる枠に入ることは難しい性質を持つ。ハリウッド映画の放送はそうした例外であったが、それですら超長期的には枠を失っている。外国製番組は、実際には深夜や平日の日中、多チャンネル・サービスのなかで放送されることが多く、それゆえに「大量に、割安な価格で」供給できる売り手は強い。ハリウッド・ドラマや日本アニメの強さの一因はここにある。

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