そして海外投資やリソースの海外移転、例えば製造業なら一部の工場海外移転などが次のフェーズであるが、番販ならば「企画」と「フッテージ」の移転が検討される。企画はドラマ台本などの移転、つまりリメイク権とバラエティなどの企画書の移転、いわゆるフォーマット販売であり、番組そのものの制作は現地の事業者によってなされる。フッテージ販売も番組の〝パーツ〟の一部であり、制作するのは購入者である。フッテージ販売は、BBC Motion Galleryがその象徴的な事例であり、現在それはGetty Imagesによって運営されている。ゲッティの前はT3MEDIAによって運営されていたが、そのときからわが国からもNHKやフジテレビなどが参画し、世界的なフッテージ販売の巨大ノード・サイトになっている。英国連邦を代表するような公共放送であり世界的な取材ネットワークを持つBBCは、フッテージの獲得と供給にも熱心な側面がある。こうしたフッテージ獲得には、通信社からの購入や世界各所の放送連盟での交換、提携先の外国放送局との交換などの手法があるが、上記は世界の主要な放送局が直接参加する売買サイトになっている。

 リメイク権やフォーマットは、ときにオリジナル制作者による制作アドバイスといったアフターサービスが行われることもあり、それが実現すると、販売担当者同士ではなく、現場の制作者同士が交流するチャンスが生まれてくる。これが「共同制作」の芽である。

 わが国の共同制作は、
・キー局と欧米制作会社の間のフォーマット共同制作
・日本ドラマのアジアなどでのリメイク
・地方局の外国取材クルーの取材サポートをきっかけとした共同取材、制作
・Tokyo Docsにみられるドキュメンタリー・ジャンルの企画マーケット といった形で観察される。

 「海外投資」は、さらに進めば現地法人投資、直接的な現地制作会社への投資もある。わが国キー局のなかには、中華圏への投資を始めているところもある。もちろん中国独特の問題、つまりラテ総局による検閲や違法流通問題への対処でもあったが、何よりも巨大な中国市場への期待が絶大である。

 さらに「海外投資」では、現地に流通会社の投資(チャンネル・ネットワーク and/or伝送路を持つ放送局)を行うものがある。国営・公共放送が在外同国人向けに、国際放送や現地多チャンネル・ケーブル&衛星放送向けチャンネル・サービスを展開する例もそうである。わが国内でも韓国やブラジル、香港のそうしたチャンネルがケーブルやスカパーを通して視聴可能である。

 わが国の場合、アジアをエリアとするJET―TV(Japan Entertainment Television Pte. Ltd. :1996年に、住友商事、TBS、MBS、HTB、および台湾地元資本などが出資して設立。現在は、日本番組放送局から総合放送局へ発展)、㈱日本国際放送(Japan International Broadcasting Inc.:NHK、テレビ朝日、TBSテレビ、日本テレビ、フジテレビ、マイクロソフトなどが出資)、WAKUWAKU JAPAN (スカパーJSAT、クールJ機構が出資。インドネシア・ベース)が、そうした例である。これ以外にもハワイやアメリカ本土には、日系人、在留邦人を対象とした日本語放送チャンネルがある(ただし資本は米国)。

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