朝日新聞による報道で明るみに出た、かんぽ生保商品の不適切販売。疑いのある事例が18万3千件にも及んだというこの問題をめぐる、半年間の取材の成果を書籍化。

 販売を担った日本郵便のノルマ重視の姿勢、その中でモラルが荒廃していく局員らの姿は、まさにブラック企業そのものだ。郵便局への信頼に依存し、高齢者を「ゆるキャラ」「半ぼけ」と呼んで食い物にしてきた手口はどう見ても悪質。問題発覚後も強弁を弄しつづけた首脳陣、あまりにずさんな実態調査のあり方には言葉を失う。国会問題にまでなったNHKとの攻防についても詳しい。その背景からは、40万人超の従業員を抱え、政府に忖度する体質の根づいた日本郵政グループの深い闇が覗く。

 信頼回復は遠い。郵政の今後を見守るためにも押さえておきたい一冊。(平山瑞穂)

週刊朝日  2020年3月13日号