約550万人に上るパレスチナ難民の命を守る活動を続ける日本人医師が現地の人々の声を伝える。著者は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の保健局長として、米国が昨年8月に支援の全面打ち切りを発表した直後から資金集めに奔走した。

 著者は医療・教育・社会福祉支援を行うUNRWAの活動を紹介し、安価なパンで空腹を満たす一方、運動する場がないため、難民に糖尿病が多いことを報告。ガザ地区では、毎週金曜にデモがあり、イスラエル軍によって多くの死傷者が出ているにもかかわらず、医療体制が崩壊しており、危機的状況にあると訴える。

「わたしは“自分のために”仕事をしている」と書き、「弱者への支援」が自分の満足に繋がるという。日本の私たちに何ができるか、考えさせられる一冊だ。(森田信子)

週刊朝日  2019年10月4日号