社会学者・金菱清がゼミ生とともに、東日本大震災で身近な存在を亡くした人々の夢を記録した。

 夢の中で死者たちは、死に際の様子を教えたり、悲しみにふけってばかりいる家族を励ましたり活を入れたりする。夢には震災前の何気ない姿で見えることも、震災後の成長した姿で現れることもある。語り手の話からは、彼らがこの7年間死者を切り捨てることなく、日々の暮らしの中でどのように亡き人と向き合ってきたかがしみじみと伝わる。

 夢記録である意義はここにある。夢は過去から未来への線的な時間の流れを無化し、亡き人が現在にも、未来にも存在できるようにするのだ。だが、未来にだけ主眼が置かれた復興の過程では、死者が排除される。そのことが遺族を再び傷つける。復興の在り方を再考する機会にしてほしい。

週刊朝日  2018年5月18日号