プロ野球で新人を選択するドラフト会議。1位指名され、鳴り物入りで入団した元選手の心境に迫った一冊だ。

 取り上げるのは「元祖甲子園アイドル」荒木大輔や、巨人で名脇役として活躍した元木大介、甲子園準優勝投手の大越基など野球ファンならば誰もが知る8人。共通するのは、意外だが「自らを客観視し、欲がない」こと。荒木も元木もプロに行けるとは思わなかったと振り返る。大越は獲得の打診がありながら、高校時代の監督にプロ志望かを聞かれ「全く行く気はありません」と即答したという。メディアが伝えてきた姿とは異なる実像が浮かんでくる。

 彼らの実績は一流とは言えない。貪欲さがあれば異なる結果が待っていたかもしれない。登場する全員が過去を引きずらず、今を楽しんでいるのが印象的だ。

週刊朝日  2017年12月1日号