東南アジアのカンボジアでは、子どもたちに「孤児」を演じさせ、外国人観光客やボランティアから寄付金や奉仕労働を引き出すビジネスが存在している。ルポライターの著者は、NPOなどが主催するスタディーツアーに参加し、その実態を見聞したことがきっかけで、この問題に向き合っていく。

 悪質孤児院で起きていた性犯罪の状況や、半ば強制的にレストランや路上で踊らされる子どもたちの日常、日本人が設立した孤児院の現況、成人したかつての「孤児」たちの思いなどが報告される。著者の取材は綿密で、渦中にいる子どもたちの姿が立体的に浮かび上がってくる。終盤では、観光客による安易な金銭的援助が、逆に悪徳ビジネスに利用される実態が綴られる。第4回潮アジア・太平洋ノンフィクション賞受賞作。

週刊朝日  2017年10月20日号