著者は大学院で社会学を専攻後、5年半の新聞記者経験を経て作家になった。だが以前はAVに出演。現在は社会学者としても注目される。その異色の経歴を振り返りつつ、母との愛憎に満ちた関係性をエッセイにまとめた。

 夜の世界の狂乱が生活の中心になっていたこともあってか、性生活や出会った女性たちの描写はいずれもけばけばしく、文章そのものも過度に飾った印象を受ける。しかし読み進めるうちに、そのようなものに依存せざるを得ない、著者の抱える寂寥感も浮き彫りとなる。

 一方、母の死に関連した本書後半の文章は、驚くほどストレートな文体となる。どちらが本当の著者の姿なのだろうか。私的なエッセイではあるが、むしろこの二面性は、「夜の女たち」の普遍的な姿であるのかもしれない。

週刊朝日  2017年9月15日号