水俣の海岸の再生を願う作家が、植物生態学の第一人者と対談。
 石牟礼の家の対岸にある「大廻りの塘」は有機水銀などの毒に侵され、埋め立てられている。だが、むかしは海の潮を吸って生きる、アコウというガジュマルの仲間の木が生えていた。苗を海岸に植えたい、と石牟礼が言うと、土壌条件を整えたのち、水俣の海岸本来の木にシイ、タブノキ、カシと混ぜて潮水にも耐える森をつくっていけると宮脇。
 東日本大震災の被災地沿岸の防波堤林を始め、世界1700カ所以上でその土地本来の植生の森をよみがえらせてきたが、宮脇に毒に侵された土地の再生例はない。しかし、水俣が森によって再生していく姿を発信できればと願う。石牟礼の文学の底に流れる鎮魂の思いや、宮脇の研究に関する文章も収める。

週刊朝日 2016年12月2日号