2014年6月18日、東京都議会の一般質問で、不妊治療などについて質問中だった女性議員に「早く結婚したほうがいいんじゃないか?」「まずは自分が産んでから!」「産めないのか?」などの野次が飛んだ。思い出しました? 都議会セクハラ野次事件。
女性政治家のリアル』は、その標的にされた塩村あやか議員(当時はみんなの党。同党解党後はひとり会派)の著書である。
〈それまでも酷い野次は日常茶飯事でしたが、女性蔑視も甚だしい、悩みを抱える女性に対しての無神経きわまりない言葉。そして続く野次と笑い声。その野次の多さは、マイクを使って質問に立っている自分の声すら聞こえなくなってしまう状態でした〉
 なぜそんな野次が飛んだのかといえば〈それは、私が議員一年目/女性/小会派(当時)だから、というのが端的な答えです〉。〈根本には弱い者イジメ、差別というものが働いている〉とも。
 現役の議員さんだから都議会の闇を実名込み徹底暴露というわけにはいかないが、それでも〈「女性・若手・独身」はマークされやすい〉など、女性議員がぶつかる壁が率直に語られている。
 女性が政治家になりにくい理由は、家族の理解と協力が必要なこと、多額の供託金(地方議員の場合は50万~60万円)などの金銭負担が大きいこと。とてもじゃないが専業主婦が立候補するのは不可能に近い。結果、都議会議員の構成は127人中、女性は25人。ほとんどが野党で、60人近い与党自民党では女性わずか3人。
 1978年生まれ。いわゆるロスジェネ世代に属し、広島生まれの被爆2世で、母子家庭で育った彼女にいわせれば〈都議会は時代に遅れに遅れています〉。マイノリティーに対する差別がひどく〈いかに強い者に付いて乗り切るかということしか考えていない議員や職員が非常に多いのです〉。〈女性が政治家になるということがどれだけ無防備で、リスクのあることか〉と嘆きながらも、前向きな本。女性議員を増やすクオータ制の導入には私も賛成です。

週刊朝日 2016年11月25日号