野党はだらしない、頼りない、党利党略しか見えない。しっかりしろ、野党! 聞き飽きた(そして言い飽きた)言説である。それじゃ野党はなくてもいい?
 吉田徹『「野党」論』は、私たちの野党に対する不信感を「まあまあ」となだめて、野党の機能を一からレクチャーしてくれる。
〈野党とは「存在」というよりも「役割」です〉と著者はいう。
 野党の役割は主として三つ。
 第一に、与党に対する異議を申し立てる役割。権力の濫用をチェックする機能といってもいい。
 第二に、争点を明確化する役割。与党が掲げる政策の目的や方法論が適切かどうかを争点化、可視化し、有権者に向かって問う役割だ。
 第三に「民意の残余」を代表する役割。これは選挙結果に反映されなかった少数の民意を代弁する機能といったらいいかな。
 民主主義でポイントのひとつは多元性の確保である。〈野党は民主主義の多元的な側面を確保し〉〈野党の機能と役割に正当な地位が与えられてこそ、民主主義は十全に機能するのです〉
 なるほど、そうですよね。
 55年体制下における与野党の話がおもしろい。かつての自民党は変化をいとわぬフレキシブルな政党だった。党内の派閥が競い合い、疑似政権交代を繰り返すことで、多元的な民主制が確保されていた。一方、ヌエのごとき自民党に対抗しなければならない社会党は、理念的かつ原理主義的にならざるを得なかった。ああ、ねえ。
 しかし、今日、求められる野党の役割も変化している。著者が提言するのは「抵抗型野党」から「対決型野党」への脱皮である。必要なのはこちらから打って出る積極性。〈政治的マイノリティを代表するだけではなく、場合によってはそれを多数派へと拡大するような、民意への働きかけを要します。つまり、なるべく不特定多数を動員できる野党でなければならないということです〉
 従来とは異なる新たな民意の掘り起こしが必要らしい。嘆いてばかりもいられない。新代表の下で、さて民進党はどうなりますか。

週刊朝日 2016年9月30日号