増えた方がいいけれど、なかなか増えないものが世の中にある。その一つが、「専業主夫」だろう。今、キャリアを追求したいという女性が増えている。一方で、低収入で非正規雇用の若年男性が増えている。この両者が結婚して家庭を作れば、子どもも増え少子化も緩和されるに違いない。しかし、本書によると、日本では、女性に扶養されている夫はたった11万人、男性に扶養されている妻949万人に比べれば圧倒的に少ない。
 男のプライドが捨てられないこと、女性が働かない男性に魅力を感じないことなどがネックになって、なかなか増えないのが現状である。でも、本書に紹介されている主夫たちの経験談を読んでみると、ママ友とやりくりについておしゃべりしたり、妻が勝手に買い物をしたのを怒ったりなど、けっこう楽しそうである。なった経緯はさまざまだけど、主夫のプライドとやりがいが垣間見えてくる。なりたいと思ってなかなかなれるものでないと分かっていても、主夫で頑張っている人を応援したくなる。

週刊朝日 2016年4月8日号

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山田昌弘

山田昌弘

山田昌弘(やまだ・まさひろ) 1957年、東京生まれ。1981年、東京大学文学部卒。1986年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、中央大学文学部教授。専門は家族社会学。学卒後も両親宅に同居し独身生活を続ける若者を「パラサイト・シングル」と呼び、「格差社会」という言葉を世に浸透させたことでも知られる。「婚活」という言葉を世に出し、婚活ブームの火付け役ともなった。主な著書に、『近代家族のゆくえ』『家族のリストラクチュアリング』(ともに新曜社)、『パラサイト・シングルの時代』『希望格差社会』(ともに筑摩書房)、『新平等社会』『ここがおかしい日本の社会保障』(ともに文藝春秋)、『迷走する家族』(有斐閣)、『家族ペット』(文春文庫)、『少子社会日本』(岩波書店)、『「家族」難民』『底辺への競争』(朝日新聞出版)などがある。

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