近年の日本の海洋環境の変貌はおどろくばかり。十数年にわたり自らも潜水して取材を重ねた新聞記者が、ていねいに説き明かした。
 縄文時代から食され、貝合わせや碁石にも使われてきたハマグリだが、干潟の埋め立てなどにより在来種は数を減らし、絶滅危惧種に。万葉集の大伴家持の歌に登場するニホンウナギも、養殖のための稚魚の乱獲などで同じく絶滅危惧種になった。乱獲といえば太平洋クロマグロの親魚は、かつての4%しか残っていないという。今や外来種のムール貝は日本のどの港でも普通に見られ、反対に、日本のワカメはニュージーランドで高さ2メートルほどにまで育ち、はびこっている。
 海洋異変の原因は汚染や温暖化、二酸化炭素が多く溶け込んだ海水の酸性化などさまざまで、酸性化が進むとアワビやウニも壊滅的な打撃を受けるとされる。豊かな海を残すには、日々の暮らしを見直さなければならない。環境に配慮した漁による水産物には「海のエコラベル」が貼られているのでそうした品を買うことも一つの選択肢だろう。

週刊朝日 2016年3月18日号