終戦直後に生まれ、今年古希を迎えた名司会者・タモリこと森田一義。サブカルチャーを中心に活躍するライターの著者が、タモリの半生と戦後日本の歩みを重ね合わせ、新たな視点で戦後史を振り返っていく。
 戦争の記憶がまだ生々しかった時代、タモリは満州に住んでいた祖父や家族の話を聞いて育った。早大入学後はモダンジャズ研究会に入り、演奏旅行の司会兼マネージャーとしてモノマネやトークの才能を発揮。故郷福岡に戻った際は、折からのブームに沸くボウリング場の支配人となった。ジャズピアニスト山下洋輔や漫画家赤塚不二夫の引きでデビューした70年代半ばは、戦後生まれがほぼ半数に達し、様々な分野で新世代が台頭した時期と重なる。
「時代の申し子」とも呼べるタモリだが、しかし彼の特色はむしろ何事においても「過剰な意味づけ」を拒む姿勢にあると著者は語る。その姿勢が、高度成長を経て均質化が進んだ社会に受け入れられたとも。ビートたけしや明石家さんまとの比較もあり、時代と文化の関係性を考える上でも興味深い一冊だ。

週刊朝日 2015年11月13日号