発達障害の中のADHD(注意欠如多動性障害)に焦点を当て、症状はどんなものか、どんな治療があるのかを専門医が解説する。ADHDは従来、子どもの病気だと見られ、成人の発達障害ではアスペルガー症候群が有名だった。だが、近年はADHDの患者のほうがはるかに多く、成人の約3%にのぼるとされる。
 その症状は、過度におしゃべりをする、内的な落ち着きのなさ(多動症状)▽いらいらしがち、衝動的な行動や判断が多い(衝動性症状)▽注意の持続が困難、先延ばしにする(不注意症状)などだが、症状の個人差は大きい。そのため、うつ病やASD(自閉症スペクトラム障害)との混同も多いという。
 著者は従来の精神疾患と異なり、むしろ「特質」と言った方がいいと指摘。ADHDの人は「社会の中で輝くことのできるさまざまな『能力』や『素質』を兼ね備えている」「ためらわずに決断し突進を繰り返すのであるが、その過剰な試みは、新しい活路を切り開く契機になる」と説く。社会はどう対応したらいいのか。他人事ではすまされないことを認識させられる。

週刊朝日 2015年9月25日号