本書は詩人・谷川俊太郎氏が、2010年にNHK BSハイビジョンで放送された番組「100年インタビュー/詩人・谷川俊太郎」で語った言葉をもとに構成されている。
 谷川氏は真空管ラジオを作ることに夢中だった17歳のとき、詩と出会い、人生が変わる。詩を書くことは、他者と結びつく手段となる。そして時を経て、自分の外にある言葉の豊かさを意識するようになる。「『自分の中に言葉がある』って、ある時期から思わなくなりました」という言葉が印象深い。
 番組では途中、谷川氏自身による詩の朗読が織り込まれており、それに対応して本書でも「かっぱ」「生きる」「さようなら」など11作品を収録している。
 谷川氏は、声に出して表現することの可能性についても語る。「言葉はやっぱり、(中略)実際に声に出してみると、音の要素もあるし、言葉が描き出すイメージの要素もあるし、様々な要素が言葉にあるんですね」。意味だけでは伝えきれない、私たちをとりまく世界の手触りを、谷川氏は詩を書くことで伝えようとしている。

週刊朝日 2014年11月14日号