アイドルにはまれば、CDを大量に買い、追っかけをする。韓国料理店の店員に一目惚れすれば、大手音楽プロダクションの社員だとウソをついて関心を引き、連日のようにその店に通う。のめりこんだらトコトン突き進むのが、本書の著者、少年アヤちゃんだ。
「新しい文章家」として才能が注目されるアヤちゃんの二作目となる日記文学は、前作よりも自分の内面に深く潜り込むような作品となっており、発売後すぐに増刷された。
 アヤちゃんが綴る日記は、日々、波乱に満ちている。自称していた「オカマ」をやめたこと。電車で痴漢された中年男に連れられて、一緒に個室トイレに入ってしまったこと。14歳のとき、母親がアヤちゃんの入る風呂に入ってきたこと。一つひとつの出来事や思い出が嵐のように到来し、それが過ぎ去るとアヤちゃんはじっと自分を見つめ、起きたことに向き合い、解を得ようともがく。
 痛みを伴うその工程が、繊細で圧倒的な文章力で描かれ、目を離すことができなくなる。アヤちゃんは、毎日進化している。

週刊朝日 2014年8月29日号