いやはや、世の中にこんな植物があるとは。トゲトゲの実が百獣の王・ライオンの命すら奪う、その名も「ライオンゴロシ」、形も大きさも女性のおマタそっくりのエロティックなヤシの種。150年続く植木問屋の5代目にしてプラントハンターの著者が、世界で出会ったユニークすぎる植物たちを語るエッセー。
 寒いヒマラヤで生きるセイタカダイオウはなんと自前の温室を作る。半透明の葉でドームを作ってその中で花を育てるのだ。実を食べると巨乳になるおっぱいプランツ、花の形がメスのハチそっくり、いわばダッチワイフでオスを誘い受粉させるラン。名前も生態も植物の地味なイメージをはるかに逸脱、連中は実にトンガった人生を送っている。著者は21歳まで植物にはとんと興味がなかったが、子供の頭ほどある世界最大の食虫植物を見てあまりの衝撃に人生観が180度変わったという。
 武蔵野美術大学の学生ユニット「そらみみ工房」が描く植物の絵が秀逸。なにやら人間臭くて、ホントは言葉もしゃべるんじゃないか、てな気がしてくる。ちょっと楽しげに、「オレたちをナメんなよ」と。

週刊朝日 2013年10月4日号