現役とはどういうことか、というのをしみじみと感じさせた本でした。
 この三人がまさにトップで活躍してた時代に「りぼん」を読んでいた。巻末の三人の作品年表をつくづく眺めてしまった。1972、3年あたりだ、いちばん夢中になってた頃。もりたじゅんの『キッス甘いかしょっぱいか』とか弓月光の『おでんグツグツ』とか面白かったよなー。一条ゆかりは『おとうと』なんていう、ショッキングなマンガで小学生の私を幻惑したのであった。
 しかし本書の表紙を見て驚きましたね。それぞれ美女の絵を描いているんだけど、一条ゆかりと弓月光は「ああ、あの一条さんと弓月さんの絵だ」とわかる。残りの一人は、消去法でもりたじゅんの絵なのだが、私の知ってるもりたじゅんはこんな絵じゃない。ちょっとは似ている……ということすらない、別人の絵だ!
 もりたじゅんって、本宮ひろ志と結婚してほとんど引退したみたいになってたからなあ。年月が絵を変えたのだろうか。でも、本宮ひろ志のほうは結婚してマンガの女キャラがぜんぶもりたじゅんの描く女そっくりになって、そのまま今に至っている。てっきりヨメさんの絵も変わってないもんだと思っていた。そうか、子育て終えてから復帰してたんですね。と、表紙のイラストだけでも、当時を知るファンにはいろいろ考えさせてくれる本です。
 しかし、内容は、「懐かしのマンガ家の懐かしい話」を超えるものはない。どういうきっかけでマンガ家を目指し、どうやって人気作家にのしあがったかが思い出とともに語られて、つまり老人のいい気な自慢話だ。これは!と思うようなエピソードもない。この人たちは、今もマンガ家として露出している。でも、こうやって紹介されている作品を見て「これを読むと今がわかる」という気にならない。ただの楽しい暇つぶしである。しかしベテランてのはそういう存在で、そうなることが正しい(=若者に道を譲る)のだ。

週刊朝日 2012年11月23日号