日本競馬史上、7頭目の三冠馬となったオルフェーヴル。10月7日にフランス・凱旋門賞への参戦を控え、すでに現地で前哨戦のフォワ賞を快勝している。本書はその血統を縦糸に、日本馬の海外遠征史を横糸に綴った一冊だ。
 華々しい活躍が目立つオルフェーヴルだが、その血統には「過去のホースマンたちの無念の思いが凝縮されている」という。オルフェーヴルの母の父・メジロマックイーンを生んだメジロ牧場は、経営難から44年の歴史に幕を閉じた。しかし、わずか9日後にオルフェーヴルが日本ダービーを勝ち、名門牧場の血統は残ることになった。父・母・母の父まで全て日本で生まれた“内国産馬”のオルフェーヴルだからこそ、関わった人々の思いが胸に迫る。
 日本馬の海外遠征の変遷についても詳しい。かつては30馬身差で惨敗するなど大敗の山を築いたが、昨年には世界最高賞金のドバイのレースで日本馬が勝つまでに進化を遂げた。それでも、まだ凱旋門賞を勝った馬はいない。オルフェーヴルの走りが期待される。

週刊朝日 2012年10月12日号