味澤将宏さん(撮影/写真部・小黒冴夏)
味澤将宏さん(撮影/写真部・小黒冴夏)

足立:今の時代、どんな製品・サービスも話題にならないと売れません。

味澤:企業からの一方的なマスコミュニケーションが効きにくくなってきていて、そのかわり、周りの人の意見とか、世の中で話題になっているものに対して、消費が動くようになってきました。なので最近の傾向として、テレビなどのマス広告に偏重していた企業が、ツイッターとテレビの組み合わせを行うようになってきています。

足立:その中でも上手、下手というのがあるでしょうね。

味澤:ツイッターをうまく活用できる企業というのは、一方的に何かを押しつけようとしないで、ユーザーインサイトを理解した上で、「話題にしてもらえそうなネタを、ツイッターの中に置いておく」ということができます。ブランドに関連するインサイト、あるいは世の中で起きていることに対するインサイトを理解していて、会話をつくっていったりその会話に入っていったりしていると思います。

足立:インサイトを理解して会話を作っていくためのポイントがいくつかありますよね。たとえば、味澤さんは「モーメントをとらえる」とよく話されています。

2019年4月1日の「令和」発表から2時間の関連ツイート数は450万にのぼり、50万ユーザーがツイッターで新元号を確認した
2019年4月1日の「令和」発表から2時間の関連ツイート数は450万にのぼり、50万ユーザーがツイッターで新元号を確認した

味澤:世の中で話題になることは、ツイッター上でも必ず話題になります。そのモーメントを理解してうまく活用することがやはり大事でしょう。たとえば、「令和」は発表されてから実際に改元されるまで1カ月あったわけです。実は、1カ月というのは会話が醸成される期間として非常に適しています。そして最も世の中の関心が高まった元号が令和に替わるタイミング、つまりモーメントをうまくとらえて、ツイッターの「トレンド」や「ファーストビュー」を活用して会話をつくったのがサントリーのザ・プレミアムモルツの「乾杯」キャンペーンです。マスメディアでは平成を振り返るといった、いわば後ろ向きの話題がほとんどでした。その中にあって、特別な日を特別なビールでお祝いしようと、非常に前向きな会話のタネを提供したわけです。1分40秒ほどの「未来」をテーマにしたツイッターでは珍しい長尺の動画も公開しました。キャンペーンのハッシュタグのついたツイートの数が通常の何倍も多かったし、動画のビュー数もコンプリーションレート(視聴完了率)も非常に高かったわけです。

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