ポスト氷川きよし? 現役大学生演歌歌手、辰巳ゆうと「冷ややかな目がつらかった」過去

福井しほdot.
辰巳ゆうとさん(撮影/大野洋介・写真部)

辰巳ゆうとさん(撮影/大野洋介・写真部)

「冬の時代」と叫ばれ続ける演歌界。紅白歌合戦に演歌歌手が出場するも、誰もが一度は耳にしたことがあるようなヒット曲は久しく出ていない。そんな不況を吹き飛ばす、大型新人が現れた。21歳の現役大学生ながら、デビューしてわずか1年でレコード大賞の最優秀新人賞を手にした辰巳ゆうとだ。

【写真】凛々しい表情を見せる辰巳さん(全3枚)

「どうして演歌を歌い始めたのか、はっきりとした記憶はありませんが、気付けばマイクを持っていたみたいです」

 まっすぐな目で、辰巳は語りかける。古墳が多いことで知られる大阪・藤井寺市の出身。戦隊ヒーローが大好きだった男の子は、おしめをしていたころから、祖父に連れられたカラオケ喫茶で演歌を聴き続けた。

 物心がついたころ、テレビでは「箱根八里の半次郎」や「きよしのズンドコ節」などでヒットを連発していた氷川きよしが一世を風靡していた。キリリとした表情に、こぶしをきかせて歌う姿がカッコよかった。だが、小学校に入学して、思わぬカルチャーショックにぶち当たる。

「みんな演歌を聴いているものだと思ったら、周りに聴いている人がいなかったんです。当時、流行っていたJ-POPの話についていけない。友達との温度差みたいなものを初めて感じました」

 聴く音楽が違うだけ。このときは、単にそう思っていた。だが、思春期に入り、少しずつ「好き」の違いが気になり始める。ヒットチャートにはロックやポップス、アイドルソングのタイトルがずらりと並ぶ。いつの間にか、演歌が好きだと進んで言うことはなくなった。

 それでも、情熱が冷めることはない。小学校の卒業文集では、将来の夢の欄に「演歌歌手」と書いた。中学1年生のときには、東京都内で開かれた「長良グループ ティーンズカラオケ大会」に出場。それがきっかけで、大会を主催していた音楽事務所への所属が決まった。

 高校時代の3年間は、月に1回、ボイストレーニングを受けるためだけに、大阪から東京へ通った。大学進学とともに上京し、舞台度胸をつけようと演歌では珍しいストリートライブに挑戦。辰巳の“ステージ”の1つが都内の赤羽駅前。近くには庶民的な居酒屋が軒を連ねる場所だが、最初はつらいことが多かった。

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つらさの理由

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