鉄道写真家の櫻井寛氏(左)と助川康史氏
鉄道写真家の櫻井寛氏(左)と助川康史氏

■Q 流し撮りのコツは?(東京都・13000k区民さん)

櫻井:腰です。上半身で撮るのではなく、腰ごと回します。

助川:直立不動だとうまく回らないので、中腰にして膝をうまく使えばより広い範囲で列車を追うことができます。

櫻井:ひたすら練習です。僕は撮影現場に余裕を持って行って、「前座」の列車を何本か流し撮りをして感覚をつかむんです。東海道新幹線に乗る場合は各駅停車の「こだま」の最後尾に乗って、途中駅でのぞみに抜かれるごとに流し撮りします。だから「こだま」に乗れば写真がうまくなりますよ。(笑)

助川:名言出ました!(笑)

櫻井:毎回やると車掌さんとも仲よくなれます。先日、座席でうとうとしていたら車掌さんに起こされました。「ここは5分停車なので2本に抜かれますよ」って(笑)。東京行きの「こだま」が停車する三島駅はホームが長く、流し撮りしやすいんです。

助川:他の駅だと車両が被りやすいですよね。

櫻井:あと、小田原駅のホームで半日練習したら、そりゃうまくなりますよ。次から次に来ますから。(笑)

助川:流し撮りで言えば、僕は長玉(望遠)派です。

櫻井:そうなんだ。

助川:流し撮りは円運動。だから標準ズームで被写体が近くなると回転半径が小さくなる。ところが、電車から離れて望遠ズームで狙うと回転半径が大きくなるので、ブレずに見える範囲が広がるんです。最近の鉄道誌が好む流し撮りは、背景こそ流れているけど、列車自体はあまりブレていないもの。あれは望遠ズームでないとできません。その代わり三脚のスイングを使い、レンズの手ブレ補正を流し撮りに向いたモードに変える。それらを組み合わせると格段に精度が上がります。

あと、理想の構図取りのために前座の列車はいいと思います。まずヘッドライトの位置の目安になる位置にフォーカスポイントやフォーカスエリアを設置して前座で試す。それで本命の列車のヘッドライト位置を予測して構図を微調整していく。
櫻井:ありがたいことに、クルマと違って電車は軌道から逸脱しませんから置きピンの予想ができます。でも、新幹線と在来線では速度が段違いです。

助川:新幹線に慣れると在来線は楽に感じます。ウェートトレーニングと同じ(笑)。

櫻井:もっとも、どんな高速でシャッターを切っても新幹線はブレますけどね。

助川:時速100kmで走っていたらシャッター速度が1/1000秒でだと3cm、時速320kmで走っていたら9cmぐらい動くわけです。だから新幹線を撮る場合は超高画素機を使うとブレが気になっちゃうので、もう少し画素数を落とした機材を使います。

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