入学すればほとんどの人が医師になれる医学部と異なり、法科大学院は、進学しても法曹への道が保証されない。法科大学院の学費は、私立なら2年で200万円以上、3年で300万円以上かかる(法学の既修、未修で2年、3年のコースがある)。こんな大金を払っても、現状、司法試験に合格できるのは5人に1人程度しかいない。志願者が減るのは当然だ。こうして、優秀な人材は法曹を目指さなくなる。

 これは法曹界、いや日本の将来にとって相当深刻な事態である。単純計算でいえば、わずか十数年で、弁護士、検察官、裁判官になりたいという優秀な人を約3万人以上(4万1756人-8159人)も失ったことになるのだから。

 一方、司法試験には、法科大学院に通わず「司法試験予備試験」を通った者が受けられる制度がある。時間的、経済的に法科大学院に通えない人向けの試験で、これに合格すれば司法試験の受験資格を得られる。こちらの合格率は72.5%(2017年の受験者数400人、合格者数290人)。いわゆる地頭のよさに自信がある天才、秀才たちは、法科大学院はムダとばかりに、チャレンジする。

 こうまでそっぽを向かれては、よほどの司法試験合格率上位校でない限り、法科大学院の存続は厳しい。実際、今日まで35校が募集停止(廃止を含む)に追い込まれた。立教大青山学院大も撤退する。今後も募集停止は増えるだろう。だが、責任は誰もとらない。

 法科大学院制度は事実上、破綻している。それに伴い法曹志願者が減ってしまうと、20年、30年後の法廷はどうなるのだろう。優れた裁判官、検察官、弁護士が少なくなり、まともな裁判が行えなくなる日が来るのではないか。

 そんな国にさせないために、早急に法科大学院制度、法曹養成のあり方を見直すべきである。たとえば、法科大学院の学生数を、例年の司法試験合格者数に近づける、総量規制的な荒療治を行い、合格率を高める。そして全体の司法試験合格者を徐々に増やしていくとか……。

教育ジャーナリスト・小林哲夫

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