写真はイメージです。(Gettyimages)
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  政府は6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」や「こども未来戦略方針」で、少子化や人口減に歯止めをかけるため「少子化対策・こども政策の抜本強化」を打ち出した。1月に「異次元の少子化対策」とアピールするなど岸田文雄政権にとって肝いりの政策だ。だが、その柱の一つ「児童手当の拡充」は額面通りに受け取れないとの指摘がある。

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 骨太の方針や、こども未来戦略方針には、児童手当は2024年度に第3子以降の子どもに対して月額3万円に増額するとともに、支給対象を高校生(18歳に達する日以後の最初の3月31日)まで広げると明記した。現在は夫婦と子ども2人の家庭の場合、親のどちらかの年収が960万円以上あると月5千円に減り、年収が1200万円以上だとゼロになるが、こうした所得制限もなくす方針だ。

 しかし、社会保険労務士でファイナンシャルプランナー(FP)の北村庄吾さんは「実際の姿よりも大きくみせている」と指摘する。

 どういうことか。北村さんは続ける。

「児童手当における子どもの数え方は、一般的なとらえ方とは異なります。あくまでその世帯の中で、手当が支給されている子どもをカウントする仕組みです。つまり、支給対象から外れる高校卒業の歳になると、子どもとしてカウントされなくなってしまうのです」

 話を分かりやすくするために男3人きょうだいの子どもがいる家庭を想定してみよう。

 この場合、きょうだい3人が、手当が支給される0~18歳の歳にあるなら、三男は「第3子」として扱われる。

 しかし、長男が高校を卒業すると長男には児童手当は支給されなくなり、「第1子」はそれまでの長男から、「第2子」の扱いだった次男になる。同じように、「第3子」だった三男は「第2子」としてカウントされる。

 この結果、三男への支給額はそれまでの月額3万円から同1万円に減ってしまうというのだ。

「通常なら、『第3子』と言われたら3番目の子どもを指すと考えるでしょう。ところが、児童手当の仕組みのうえでは違う。上の子どもとの年齢差によって、受給額に差が出てしまうケースがあるのです」(前出の北村さん)

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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