立浪和義監督が率いるチームは投手力こそ高いが…
立浪和義監督が率いるチームは投手力こそ高いが…

 開幕から約2カ月が経過し、明日からはセ・パ交流戦に突入する今年のプロ野球。セ・リーグで昨年に続いて苦しい戦いが続いているのが中日だ。得点(123)、本塁打数(18)はリーグ最下位で、課題と言われ続けている長打力不足は全く改善の兆しが見られないのが現状である。

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 しかし本当に問題なのは長打力不足だけなのだろうか。結論から言うと決してそれだけではないはずである。中日の黄金時代と言えるのは落合博満監督が指揮を執った2004年から2011年までの8年間だが、この期間でもリーグトップのホームラン数を記録したことは一度もなく、チーム打率がトップとなったのも2006年だけである。落合監督最後のシーズンとなった2011年にいたってはリーグ最下位のチーム打率、得点となりながらも優勝を果たしているのだ。2011年は統一球が導入されてプロ野球全体でホームラン数が激減した特殊なシーズンだったことは確かだが、ホームラン、長打がなくても勝てるということをこの時のチームは示したと言えるだろう。

 そもそも中日は1997年にナゴヤドーム(現バンテリンドームナゴヤ)に本拠地を移転してから生え抜きの選手で30本塁打を放ったのは福留孝介(2003年に34本、2006年に31本)だけであり、その福留も完全なホームランバッターというタイプではなかった。落合監督時代に福留以外に長打を放っていたのは外国人選手のウッズ、ブランコ、フリーエージェント(FA)で獲得した和田一浩であり、当時も長距離打者を育成できていたわけではないのである。それを考えれば、現在の長打力不足を生え抜き選手やチームの育成に原因を求めるというのは酷と言えるだろう。

 そうなると気になるのは外国人選手とFAによる補強である。近年ではビシエドが当たりと言える外国人だが、それ以外で中心選手として十分な活躍を見せたのは2017年のゲレーロだけで、そのゲレーロも1年で巨人に移籍している。FAにいたっては和田以降に獲得したのは小笠原道大と大野奨太の2人だけ。もちろん外国人選手とFAだけでチームが強くなるわけではないが、他球団と比べても消極的な補強に終始している印象は否めない。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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