市川猿之助
市川猿之助

 歌舞伎俳優の市川猿之助さん(47)と両親が自宅で倒れているのが見つかり、両親が死亡した「一家心中騒動」の余波はいまだ収まらない。猿之助さんは警視庁の聴取に「死んで生まれ変わろうと家族で話し合い、両親が睡眠薬を飲んだ」という話をしているという。警視庁の司法解剖では両親の死因は「向精神薬中毒の疑いとみられる」と報道されたが、24日発売の『週刊文春』は猿之助さんが両親に<ビニール袋をかぶせた>と報道した。現役の医師も「向精神薬で亡くなるのはかなり困難」と疑念を示した上で、「向精神薬を飲めば死ねる」という誤解が広がることは問題だ、と語る。

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 現在、警視庁は両親の死亡の経緯を調べるため、猿之助さんへの事情聴取を進めている。

「警察署が所有する施設で聴取を進めています。猿之助さんの話の内容は『家族会議を前夜(17日)に開いた』『死んで生まれ変わる』『両親が薬を飲んだ』など断片的なもので、自殺ほう助、自殺教唆などに当たるのかなど罪名は絞り切れていないようです」(社会部記者)

 今後の焦点の一つは、薬物中毒になるほどの薬品を誰がどのように手に入れたのか、という点だ。

 そもそも、向精神薬を大量に入手することはできるのか。

 一般人が向精神薬をもらう際は、原則1カ月分しか処方されないようになっているが、薬を飲み切らずに新たに処方してもらうなどして、薬をためこむ人は少なくない。さらに、芸能人などの著名人となってくると一般人とは事情が変わってくることもあるようだ。

 相馬中央病院内科医長の原田文植氏はこう説明する。

「猿之助さんほどの著名人の場合、病院に来ると騒ぎになるので、在宅医に診てもらうことはよくあります。また、毎月受診することも難しいでしょうから、本人の意向を受けて、一般の方々よりも長い期間の薬を出すことも考えられます。たとえ100錠を超えるような大量の薬が自宅にあったとしても、不自然ではありません」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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向精神薬は「自死できるように作られていない」